宙水

宙水（ちゅうすい）とは

宙水（ちゅうすい、英語: perched groundwater）とは、不圧地下水の一形態で、地表近くの浅い場所に存在する地下水のことです。土壌水帯において、粘土層などの透水性の低い地層の上部に一時的に溜まることがあります。これは、大気と直接つながる不圧帯水層系に属しており、地下水面と地表面が近いため、降雨後すぐに水位が変動しやすいという特徴があります。

宙水の形成と特徴

宙水は、降雨が地中に浸透する過程で、透水性の低い地層に阻まれて発生します。そのため、涵養条件によっては、降雨時のみしか存在しない場合もあります。本体となる地下水（本水）とは区別され、浅い位置にあるため、古くから浅井戸による利用がされてきました。また、宙水は中水（ちゅうみず）とも呼ばれます。

宙水の利用

古くからの利用

宙水は、本体の地下水面よりも浅い位置にあるため、古くから浅井戸による利用が行われてきました。特に、本体の地下水面が深い地域では、宙水が重要な水源として利用されてきた歴史があります。弥生時代から利用の痕跡が確認されており、人々の生活を支えてきました。

近年の利用

掘削技術の進歩に伴い、深井戸の利用が普及したため、宙水は補助的な役割へと移行しています。現在では、農業用水としての利用が比較的多く、灌漑期に地表水の補助として活用されています。これは、浅い位置にある宙水が、深い掘削が必要な被圧地下水よりも経済的に利用しやすいためです。また、工業用水としては、大規模な利用には適さず、小規模な利用にとどまっています。

宙水が利用される地域

宙水は、一般的に扇状地、台地、丘陵などの地形に形成されやすいとされています。特に、関東地方のローム層に覆われた地域では多く見られます。例えば、所沢市では、地下水面が深い位置にあるため、宙水が重要な水源となり、柳瀬川・東川沿いに宙水を利用した浅井戸が発達しました。また、世田谷区北烏山（烏山寺町）などでも、宙水が生活用水として利用されてきた歴史があります。

宙水の利用の歴史

宙水を含む不圧地下水は、深井戸を掘る技術が必要なかったため、弥生時代から浅井戸による利用が確認されています。地下水の需要増加に伴い、19世紀後半頃から大型浅井戸や横井戸による開発も盛んになりました。初期は生活用水として利用されていましたが、水田農業の発達とともに農業用水としての利用も増加しました。

遺跡に見られる宙水の利用

井戸の痕跡が認められる遺跡としては、奈良県の唐古遺跡、福岡県の板付遺跡、静岡県の登呂遺跡などが挙げられます。

参考文献

世田谷区 (2008). 『世田谷の湧水・地下水』
所沢市 (2009). 『所沢の足跡 ～今月の図書館より～ 2006年度』
水収支研究グループ編 (1993). 『地下水資源・環境論－その理論と実践』 共立出版
榧根勇 (1992). 『地下水の世界』 日本放送出版協会
登坂博行 (2006). 『地圏の水環境科学』 東京大学出版会
杉田倫明・田中正 (2009). 「地中水」『水文科学』 共立出版
細野義純・末永和幸 (1996). 「宙水」『地学事典』 平凡社

関連項目

地下水
帯水層
井戸
水資源
透水性

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