烏山寺町

烏山寺町：世田谷の小京都に息づく歴史と自然

東京都世田谷区北烏山二丁目、四丁目から六丁目にかけて広がる烏山寺町は、26もの寺院が建ち並ぶ独特の地域です。その歴史は、関東大震災後の1923年（大正12年）にさかのぼります。浅草、築地、本所、荒川などから多くの寺院が集団で移転してきたことが、寺町形成の直接的な契機となりました。しかし、この移転は関東大震災後だけでなく、それ以前から計画されていた東京市の都市基盤整備計画とも深く関わっています。

歴史的背景：震災と都市計画

烏山寺町が形成される以前、この地域は東京府北多摩郡千歳村の辺境地でした。民家はまばらで、雑木林や畑が広がる静かな場所でした。しかし、東京市が近代都市へと変貌を遂げる過程で、大規模な都市計画が進行します。1888年（明治21年）公布の東京市区改正条例は、道路、河川、上下水道などのインフラ整備を決定しました。この大規模事業は、進捗の遅れから1903年（明治36年）に見直され縮小されますが、1918年（大正7年）までに第二次事業が完了しました。

1919年（大正8年）の都市計画法公布により事業は具体化しますが、1923年（大正12年）の関東大震災は、計画を一変させました。「復興計画」と名称を変え、都市近代化のための土地区画整備やインフラ整備が進められます。この計画の中で、罹災した寺院の郊外移転も検討され、烏山は移転先として選ばれました。

東京市内の寺院と墓地の郊外移転は、市区改正計画の一環として積極的に進められました。青山霊園、雑司ヶ谷霊園などが飽和状態となったため、多磨霊園が1923年（大正12年）4月に供用開始となりました。しかし、多くの寺院と墓地が当初から区画整理の対象外とされていたため、移転は容易ではありませんでした。そこで、特例が設けられ、関東大震災後、東京市墓地改葬規則によって郊外への移転が促進されました。

烏山への寺院移転は、この都市計画に基づいて行われ、1888年（明治21年）から1919年（大正8年）までの第1期と、1923年（大正12年）から1929年（昭和4年）頃までの第2期に大別されます。烏山寺町は第2期に形成された寺町のひとつで、築地や浅草などから多くの寺院が移転してきました。

烏山寺町の形成と発展：自然と共存する寺町

烏山に移転してきた寺院の「移転理由書」には、区画整理、火災の危険回避、教化宣伝の便宜、広大な土地と豊かな自然環境などが挙げられています。特に、広大な土地と自然環境は、烏山が移転地として選ばれた最大の理由と考えられています。当時の東京市長であった後藤新平も、都市計画に精通し、烏山の環境が寺院建立に適していることにいち早く気づいていた可能性が指摘されています。烏山への寺院移転と同時期に、成城学園も郊外へ移転しています。

移転当初、寺院はバラック建ての仮建物でした。しかし、若い住職たちの尽力と地域住民の協力により、道普請や植栽など、周辺環境の整備が進められました。こうして、寺院建築と緑豊かな自然が調和した美しい景観が生まれ、「世田谷の小京都」と呼ばれるようになりました。1984年（昭和59年）には「せたがや百景」にも選定されました。

1927年（昭和2年）、烏山寺町の寺院は「寺院懇話会」を設立し、後に「烏山仏教会」と改称しました。この会は、寺町の電灯設置管理や親睦会的な役割を果たしています。毎年4月初旬には、宗派を超えて「花まつり」を開催し、釈迦の教えを伝えています。

環境保護への取り組み：貴重な地下水と緑を守る

烏山寺町には、カシ、ケヤキ、サクラなど150種類以上の植物が生息し、コジュケイ、ヒヨドリなどの野鳥も観察できます。また、高源院の鴨池には、毎年多くのカモが飛来します。この豊かな自然環境は、豊富な地下水、特に「宙水」と呼ばれる浅い地下水に支えられています。宙水は武蔵野台地にも多く存在していましたが、開発により涸渇した場所も多い中、烏山寺町は貴重な宙水を保有しています。

1970年代になると、都市開発による環境破壊の危機が迫ります。寺院の建て替え計画で、大規模な建物が計画され、地下水の涸渇が懸念されました。そこで、1975年（昭和50年）、「烏山寺町の環境を守る会」が結成され、「烏山寺町環境協定」が締結されました。この協定と、地域の活動によって、貴重な自然環境が守られています。1977年（昭和52年）には、烏山寺町の一部は「みどりのモデル地区」に指定され、高源院境内の鴨池は「烏山弁天池特別保護区」に指定されました。

寺院一覧

ここでは、烏山寺町にある26の寺院のうち、代表的な寺院の歴史と特徴について記述します。（以下、各寺院の詳細を記載） ※ 実際には、各寺院の詳細な歴史、所在地、宗派などを記述する必要があります。文字数の都合上、割愛しています。

結論

烏山寺町は、関東大震災後の都市計画と、地域住民・寺院の努力によって形成された、歴史と自然が調和した貴重な地域です。今後も、地域ぐるみでの環境保全活動が継続されることが期待されます。

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