定公 (周)

定公（ていこう）は、古代中国の西周時代に活躍した人物であり、周王室の祖である周公旦の血を引く由緒ある家系の出身です。彼の事績は、西周王朝が動揺期を迎えた時期と深く結びついています。

紀元前841年、当時の周王朝の君主であった厲王（れいおう）は、その暴虐な政治によって民衆の大きな不満を招きました。この民衆の怒りはついに大規模な反乱へと発展し、厲王は首都から逃亡を余儀なくされます。この時、王不在となった周王朝の政治を担ったのが、定公と召の穆公（ぼくこう）でした。二人は協力して政治を行い、この時期を「共和」と呼びます。

「共和」とは、文字通り「共同で政治を行う」という意味であり、この時期の政治体制は、従来の君主による専制政治とは異なり、君主不在の間、複数の有力者による合議制で運営されたと考えられています。定公と穆公がどのような役割分担をしていたか、具体的な政治手法は史料が乏しいため、詳しくは分かっていません。しかし、彼らが民衆の不満を鎮め、社会秩序を維持する上で重要な役割を果たしたことは間違いありません。

この共和政治は、14年間にわたり続きました。その後、厲王が亡くなり、太子の姫静（きせい）が宣王（せんおう）として即位します。宣王の即位に伴い、共和政治は終わりを告げ、再び君主による統治体制へと移行しました。定公の生涯や業績については、この共和政治に関わったこと以外は、詳しい記録が残されておらず不明な点が多いです。

定公が歴史に名を残した背景には、周王朝の過渡期とも言える時代状況があります。厲王の暴政とそれに対する民衆の反乱は、周王朝の権威が揺らぎ始めた兆候であり、その後の王朝の変遷を予感させるものでした。その混乱期において、定公は共同統治者として、王朝を一時的にではあるものの安定させました。この出来事は、周王朝の歴史だけでなく、中国の歴史においても重要な転換点の一つとして、後世に語り継がれています。

定公は、激動の時代を生き、その中で自らの役割を果たした人物として、歴史に名を刻んでいます。

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