定軍山の戦い

定軍山の戦い

定軍山の戦いは、後漢末期における曹操と劉備の間で繰り広げられた戦闘で、益州北部の戦略的拠点である漢中を巡るものでした。この戦闘は単なる軍事戦略の対決に留まらず、両者の戦略家としての智恵や勇気も試されるものでした。

戦闘の背景

赤壁の戦い後、劉備は荊州南部の四郡を占拠し、勢力を拡大していました。214年には益州を手中に収め、これに対抗するため孫権から荊州の分割を要求されましたが、劉備は再分割を約束し、結果的に孫権との間で一時的な和解を成し遂げました。しかし、この和平は長く続かず、同時に曹操が漢中に対する攻撃を開始する状況が整いました。

曹操は初期は苦戦しつつも、最終的には張魯を打倒し、漢中を制圧。これを受け、劉備は漢中を奪回する計画を再度立て始めました。劉備の計略は、巴中の張魯を引き込む方向に進みましたが、張魯は曹操に降伏し、曹軍の攻撃が続いていました。

戦闘の様相

219年、劉備は定軍山において5万の軍を集結させ、夏侯淵の軍と激突しました。最初に劉備は敵軍を夜襲で攻撃しましたが、張郃はこれを凌ぎました。劉備は続けて兵力を分割し、張郃の側面を攻撃することで優位に立ち、次第に夏侯淵の軍は劣勢に追い込まれました。ここで法正の進言により、劉備は夏侯淵の本隊を集中攻撃することに決めます。

黄忠が先頭に立ち、夏侯淵の陣を狙いました。この奇襲は成功し、夏侯淵軍は壊滅的な損害を受け、ついには夏侯淵とその部下が戦死する事態に至りました。夏侯淵はその性格から迅速な決断をしがちであり、これが彼の敗因となりました。

戦後の展開

次第に無防備となった曹軍に対して、劉備は漢中の支配を確立しました。曹操は漢中奪回のため50万の兵を率いて自ら軍を率いますが、劉備は地形を利用した防御的な戦いでこれに対抗しました。劉備は自信を持ちつつ戦闘に臨み、曹操軍を持続的に撃退します。

戦の結末と影響

長期間続いた攻撃にもかかわらず夏侯淵の死後、曹軍は混乱し、遂に撤退に追い込まれました。この勝利により劉備は漢中王に即位し、漢中を支配することになりました。この戦闘は劉備にとっての転機となり、彼の名声を高めただけでなく、三国志の歴史においても重要な一ページを刻むこととなります。

その後、黄忠が昇進し、関羽の荊州攻撃が始まるなど、劉備軍はさらなる勝利を収めていくことになります。

三国志における位置づけ

この戦闘は『三国志演義』でも大きく取り上げられ、曹軍40万に対し劉備軍は10万とされ、戦術や兵力の対比、戦いのドラマが強調されています。定軍山の戦いは三国志の物語の中でも特に重要な位置を占める出来事であり、後世に多くの影響を与えました。

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