佐々木文山

佐々木文山

佐々木文山（ささき ぶんざん、万治2年3月22日（1659年5月13日） - 享保20年5月7日（1735年6月27日））は、江戸時代初期の著名な書家です。名は襲、諱は淵龍、字は文山、通称は百助、臥龍または墨花堂と号しました。兄である佐々木玄龍もまた書家として知られています。

生涯

文山は江戸で生まれました。生まれつき聡明で、幼少の頃から書に親しみ、成長するにつれて学問を好み、難解とされる王羲之や王献之の書も深く理解したと伝えられています。宝永6年（1709年）に致仕するまで、讃州高松藩の藩士として禄を受け、江戸の西窪に居を構えました。長野氏からの養子である嘉武を跡継ぎとしましたが早世したため、晩年に生まれた長男・嘉隆（文生）を後嗣としました。その子孫は、代々書法をもって高松藩に仕えました。病により芝圯の郷で没し、享年77歳。武州三縁山（増上寺）浄運院に葬られました。現在の墓所は青山霊園にあります。法号は「流芳院發誉墨花文山居士」です。

書法と逸話

兄の玄龍と同様に、文山も朝鮮や中国の書風に影響を受け、篆書、隷書、楷書、草書など、あらゆる書体において古体を尊重しました。門人の中では、久慈文真が特に知られています。

俳人の宝井其角は玄龍の弟子であったため、文山とも親交がありました。ある時、其角や紀伊國屋文左衛門と共に吉原へ遊びに行った際、揚屋の主人から屏風に書を求められました。酔った勢いで文山が「此所小便無用」と書いたところ、揚屋の主人は興ざめしてしまいました。しかし、其角がすかさず筆を取り「花の山」と書き足すと、文左衛門が「此所小便無用　花の山」という面白い句になったと笑い、主人は喜んでその場は収まったと伝えられています。文山は酒を好み、酔うほどに筆に妙味が現れると言われていました。

『二老略伝』には、細井広沢が書いた稲荷の額を見て、文山が「これは中国人の書だ。日本にこれほどの書家はいない」と絶賛したという逸話が記されています。その後、作者が広沢であることを知り、「広沢先生には再々手を措く。この間もある巻物を見て中国人と思って褒め、名を見て我を折ったことだった。さても見事な書だ」と感嘆したそうです。当時、名声や利益を争う書家が多い中で、文山ほど率直な人物はいなかったと評されています。

文山は、その卓越した書法と飾らない人柄で、多くの人々から敬愛された書家でした。

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