宝井琴星

宝井 琴星

昭和22年（1947年）10月26日生まれの講談師、宝井 琴星（たからい きんせい）。本名を内藤 鉄止（ないとう てつじ）といい、講談協会に所属しています。現在、講談協会の理事および事務局長という要職を務める傍ら、日本演芸家連合の理事も兼任しており、講談界のみならず、演芸界全体の発展に尽力しています。

経歴

講談師としての道を歩む前、宝井琴星は全く異なる分野で社会人としての第一歩を踏み出しました。1971年に東海大学第二工学部建築科を卒業後、設計事務所に入社。建築という専門職に従事していました。

しかし、講談への強い思いを抱き続け、1973年、ついに四代目宝井琴鶴への入門を決意します。前座名として「琴鉄」を名乗り、伝統的な講談の世界に飛び込み、師事した師のもとで基礎から修行に励みました。

入門から約6年後の1979年には、二ツ目に昇進。講談師としての実力をさらに磨き、高座の経験を積んでいきます。そして、二ツ目としてさらに6年間精進を重ねた結果、1985年に真打昇進を果たしました。この節目に、長年親しまれた「琴鉄」の名を改め、「宝井琴星」として新たな一歩を踏み出しました。真打昇進は、一端の講談師として認められた証であり、その後の活動の基盤となります。

人物・芸風

宝井琴星の講談は、古典に根差しながらも、時代の流れを捉えた新しい試みに意欲的であるのが大きな特色です。古くから伝わる「徳川家康」「太閤記」「塚原ト伝」といった歴史上の人物や出来事を描いた古典講談を大切に語り継ぐ一方で、現代社会の世相や話題を反映させた新作講談の創作にも力を入れています。

その新作は、時代劇の雰囲気を持つものから、現代を舞台にした風刺的なものまで、非常に幅広いテーマを扱っています。例えば、「あんぱんを食べた次郎長」のような、既存の物語に新たな視点を加えたユニークな作品も手掛けています。また、自身で一から物語を紡ぎ出した自作講談も多数発表しており、「杉野はいづこへ行った」「片腕の力」などが知られています。これは、読み手としての技量に加え、優れた物語作家としての才能も持ち合わせていることを示しています。

活動

高座での講談披露に加え、宝井琴星は後進の指導にも情熱を注いでいます。約20年前から「宝井講談修羅場塾」の塾長を務め、多くの若手講談師の育成に尽力しています。この塾は、講談の技術や心構えを伝える重要な学びの場となっており、未来の講談界を担う人材育成に大きく貢献しています。

宝井琴星の一門からは、既に真打として活躍する五代目宝井琴鶴をはじめ、前座として日々修行に励む宝井小琴、宝井優星、宝井魁星などが育っています。また、残念ながら講談の道を離れた者もいますが、師匠を中心に一門は活気を持って活動しています。

趣味として紙相撲を楽しむ一面も持ち合わせています。また、かつてはメディアでも活躍し、北日本放送の番組「ジョイジョイとやま」には1976年から長きにわたり出演し、講談をより身近なものとする役割も果たしました。

主な読み物

宝井琴星が手掛ける主な読み物の一部です。

古典
徳川家康
太閤記
塚原ト伝
他多数

新作
あんぱんを食べた次郎長
他多数

自作
杉野はいづこへ行った
片腕の力
他多数

一門

宝井琴星のもとで修行を積む弟子たちです。

真打
五代目宝井琴鶴

前座
宝井小琴
宝井優星
宝井魁星

廃業
宝井琴屯
* 宝井琴波

講談協会の中心メンバーとして、また一門を率いる師匠として、宝井琴星は伝統を守りつつ、新たな講談の可能性を追求し続けています。その多岐にわたる活動は、講談の魅力を広く伝え、後世に繋げていく上で欠かせない存在と言えるでしょう。

もう一度検索