宝蔵寺 (上田市)

宝蔵寺（ほうぞうじ）

宝蔵寺は、長野県上田市にある浄土宗の寺院で、瀧洞山を山号としています。この寺は、古くからの歴史と豊かな自然に囲まれた場所に位置し、多くの人々に信仰の場として親しまれてきました。

歴史

寺伝によると、宝蔵寺の観音堂（岩谷堂）は、承和元年（834年）に慈覚大師円仁によって創建されたと伝えられています。本尊である聖観世音菩薩は、当初、本堂裏にある「奥の院」と呼ばれる洞窟の中に安置されていました。その後、安永5年（1776年）に建立された本尊に安置されることとなりました。この観音像は、長年にわたり地域の人々の心の拠り所となっています。

寛政9年（1797年）には、大出水によって石垣が崩壊する被害を受けました。この際、寺の修復のために多くの寄進が集められ、その寄進帳には、著名な力士である雷電為右衛門の署名も確認されています。このことは、宝蔵寺が当時から地域社会において重要な存在であったことを示しています。

宝蔵寺の前を通る道は、中世の鎌倉街道の一部であり、交通の要所でした。また、寺の裏山は依田城跡となっており、歴史的な背景も持っています。治承5年（1181年）には、木曽義仲が挙兵の際に、岩屋堂で戦勝を祈願したと伝えられています。その際、義仲が馬で登ったとされる道は、現在も「馬大門」としてその名残をとどめています。さらに、境内には「義仲桜」と呼ばれる、樹齢約800年の桜の古木があり、木曽義仲が手植えしたと伝えられています。この桜は、春になると美しい花を咲かせ、訪れる人々を魅了しています。

平家滅亡後、藤原景清が仇討ちのために旅の僧に扮して鎌倉へ向かう途中、宝蔵寺に立ち寄り、守護仏である千手観音を奉納したという伝承も残っています。また、景清の遺品とされる軍旗が、後に隠岐国の大満寺から寄贈されたと伝えられています。これらの伝承は、宝蔵寺が歴史の中で多くの人々の物語と深く関わってきたことを物語っています。

参考文献

『信濃三十三札所めぐり』1991年 郷土出版社
『信濃三十三番観音札所巡拝案内』2002年 そうび出版

宝蔵寺は、その長い歴史の中で、地域の信仰の中心として、また歴史的な出来事の舞台として、重要な役割を果たしてきました。現在も多くの人々が訪れ、その歴史と自然に触れ、心の安らぎを得ています。

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