実学 (朝鮮)

朝鮮の実学（シルハク）について

朝鮮の実学（シルハク）は、17世紀から18世紀にかけて発展した近代的な学問や思想を指します。当時の朝鮮では、政治党争や現実から乖離した思想に対する反省の動きがあり、実学は制度改革や産業の発展を目指す重要な学派として登場しました。

実学の名称と歴史的背景

「実学」という言葉は、李氏朝鮮時代には用いられていませんでした。この用語は1920年代から1930年代の日本の植民地時代に付けられたものであり、そのため実学という概念自体が近代の思考産物であるという批判も存在します。実学の考え方が広まった背景には、当時の朱子学が形而上学的な論議に没頭し、政治的な派閥争いに埋もれていたことがあります。

実学者とその学派

実学者は大きく二つの学派に分けられます。

経世致用学派

経世致用学派は、南人派の李瀷（1682年-1763年）やその弟子たちが中心の学派で、社会制度の改革を訴えました。李瀷は、清に対する見方を改革した著書『星湖僿説』を残し、清を夷狄としつつもその支配を否定しました。彼は西学の研究にも力を入れ、様々な西洋の文献に評を加えました。

李瀷の弟子たち

李瀷の影響を受けた安鼎福（1712年-1791年）は、『下学指南』や『東史綱目』などを著し、朝鮮の儒学が抱える問題を指摘しました。また、権哲身（1736年-1801年）も著名な弟子で、西洋に改宗したことが知られています。彼らは清や日本など他国の学問を積極的に取り入れようとしました。

利用厚生学派

一方、利用厚生学派は、清や西洋からの教訓を取り入れることで朝鮮の発展を図る考え方を持っていました。洪大容（1731年-1783年）は西洋の科学を受容し、『医山問答』を著しました。朴趾源（1737年-1805年）も中国に訪れ、文物を紹介する『熱河日記』を残しました。

実学の衰退と後世への影響

実学は、英祖から正祖の時代にかけて盛んに見られましたが、1800年に正祖が没した後、老論派が再び台頭し、実学は弾圧されることになります。この弾圧によって多くの実学者が犠牲となり、実学の教えは次第に失われてしまいました。結局、実学は後世に大きな影響を与えることはなく、朝鮮の知識人たちは清への依存を強調していくことになります。

結論

朝鮮の実学は、当時の社会における重要な思想的試みといえますが、その後の弾圧を受け、その精神は長続きしませんでした。実学者たちの努力と考え方は、後の解放運動や近代化に繋がる要素として、見逃すことのできない歴史の一部です。

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