安鼎福

安鼎福（あん ていふく）

安鼎福（1712年 - 1791年）は、李氏朝鮮時代の文臣であり、実学者としても広く知られています。字は「百順」、号は「順菴」、そして諡号は「文粛」です。彼は英祖の晩年に王世孫の教育係を務め、その後「同知中枢」という高位の官職に昇進しました。また、広成君に封ぜられる栄誉も受けました。

学問と思想

安鼎福の学問の基盤は朱子学ですが、彼は李瀷の学風を引き継ぎながら、実用的な学問に関心を持っていました。彼は、箕子朝鮮を建国した中国の殷王朝の政治家、箕子を「中華文明の保持者」として崇拝し、箕子を通じて築かれた朝鮮こそが真の「中華」であると強く主張しました。

彼は、紀元前2333年に即位したとされる檀君に関する考証を行い、彼の言説が荒唐であるとして否定しました。檀君の神話が仏教に関連する要素を含んでいることを理由に、「その説話は荒誕不経であり、仏教の考えが混入している」と指摘しました。彼によれば、檀君に関する文献は多くが仏教との関わりを持っており、572年に朝鮮半島に伝来した仏教と関連付けて考えられたと述べています。

歴史に対する見解

著書『東史綱目』では、彼は殷の太師である箕子が朝鮮に渡ったと記述し、朝鮮の歴史が箕子から馬韓、統一新羅、高句麗へとつながる正統な経路であることを示しました。彼は、漢人が侵攻して建国した衛氏朝鮮や漢四郡については、彼らが朝鮮の歴史の中で正統性を持たないと厳しく批判し、「簒賊者の支配した国家」として非難しています。これにより、朝鮮の歴史としての自信を確立し、教化と学問の意義を強調しました。

彼はまた、渤海の建国者である大祚栄の出自が靺鞨であることを指摘し、渤海を朝鮮の歴史として扱うことが不当であると主張しました。このような主張は、彼の朝鮮の歴史観に対する一貫した視点を示しています。

主な著作

安鼎福は、以下の著作を残しています：

• - 『東史綱目』
• - 『順菴集』
• - 『臨官政要』
• - 『天学考』

彼の学問は実用的であり、同時に深い歴史考証に基づいています。安鼎福は、李氏朝鮮の文化と歴史を形成した重要な知識人の一人として、後世に影響を与え続けています。

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