朱子学

朱子学の概要

朱子学（しゅしがく）は、南宋時代の朱熹（1130年-1200年）によって築かれた儒教の新しい学問体系です。この学問は、日本では「朱子学」として知られていますが、中国ではその先駆者とされる北宋の学者、程頤と共に程朱学（程朱理学）や程朱学派と呼ばれています。また、聖人の道を引き継ぐことを標榜しているため、道学とも称されます。北宋・南宋期の特異な学問は宋学としてまとめられ、朱子学もその一部を成しています。さらに、陸王心学と同様に「理」を根拠に学説が構築されているため、これらは総称して宋明理学（理学）とされています。

成立の背景

唐・宋の時代において、士大夫層の台頭があり、彼らは科挙を通じて儒教経典の知識を習得しました。特に宋時代には学術尊重の風潮が広まり、仏教や道教に対する対抗思想が盛んになりました。こうした状況が新しい思想や学問、すなわち宋学を生む土壌となり、その中から朱子学が誕生しました。

朱子学の先駆者たち

如唐代の韓愈は新興士大夫の理想主義を体現し、彼の著作『原道』には仁・義・道・徳の重要性や文明・文化主義の立場が見られます。彼の弟子である李翺の『復性書』も宋学に近い内容を含んでいます。また、周敦頤は宋学の初期の大師として著書『太極図』『太極図説』を著し、万物の生成を明らかにしました。彼の考えは後の朱熹の理論形成に影響を与えました。

朱熹の登場

朱熹は南宋時代、士大夫層の間で既に広まっていた道学に一貫した体系を与え、朱子学を完成させました。彼は建炎4年（1130年）に南剣州で生まれ、19歳で科挙に合格後、全国各地を巡りながら学問を広めました。朱熹の著書として有名なのは『知言疑義』で、ここで当時の道学に対して疑義を呈し、彼は「東南の三賢」と称されました。

朱子学の思想内容

朱子学は大きく以下の5つに分類される内容を持っています。
1. 存在論 - 理気の説
2. 倫理学・人間学 - 性即理の説
3. 方法論 - 居敬・窮理の説
4. 古典注釈学・著述
5. 具体的な政策論

理気説

ここでは、全ての存在が「気」で構成され、気の不断の運動によって万物が生成・変化すると考えます。理はすべての物事を支える根拠であり、形而上の存在とされています。

性即理の考え

朱子学の中心にあるのは「性即理」の思想です。「性」は人間の本質であり、善なる原理に従うものと考えます。これにより、人間は倫理的に正しい行動をすることが求められます。

居敬・窮理

朱熹は、聖人となるためには「居敬」と「窮理」が重要であると説きました。「居敬」は意識の集中を目指し、「窮理」は事物の理を究める研究を指します。これらは儒教的な修養方法とされています。

古典の注釈と著述

朱子学者は経典に注釈を加え、自らの見解を明らかにしました。特に『四書集注』は朱子学の重要な著作と見なされています。これにより、古典学の中心が五経から四書へと移行しました。

具体的な政策論

朱熹は現実政治にも意見を持ち、社会的な提言を行いました。彼は具体的な政策論として、飢饉対策や社倉法などを説き、その思想は後世に大きな影響を与えました。

その後の展開

朱子学は元代、明代、清代に渡って発展を遂げ、特に元代には国家の公式な学問として位置づけられました。明代の初期には国家教学としての地位を確立し、清代には考証学が主流となると同時に朱子学も重要な役割を担いました。

結論

朱子学は中国のみならず、日本や朝鮮などの東アジア全体に影響を与え、現代に至るまでその思想はさまざまな形で受け継がれてきました。

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