実戦型詰将棋

実戦型詰将棋の特徴と歴史

実戦型詰将棋とは、実際の対局で生じそうな局面を基にした問題のことを指します。この形式の問題は、新聞や雑誌に多く掲載されており、将棋ファンにとって親しみやすい内容です。実戦型詰将棋には、厳密な定義は存在しませんが、以下のような特徴が一般的に見受けられます。

特徴

• - 局面の配置: 多くの場合、問題は将棋盤の右上または左上の1/4範囲に収められています。
• - 駒の配置: 玉方の△1一香や△2一桂が配置されていることが特徴的であり、他にも△1二香や△3三桂のように移動している駒も見られます。
• - 銀の存在: △3一銀が配置されている問題も多く、これにより局面に動きが加わります。
• - 歩の配置: 3-5段目には複数の歩が配置されることがあり、これが局面的な判断を難しくします。

歴史的背景

実戦型詰将棋のルーツは、最古の詰将棋集である初代大橋宗桂の『象戯造物』にあり、ここには実際の対局の終盤から取られた問題が数多く見られます。つまり、実戦型詰将棋はその誕生以来、将棋文化の重要な一部として存在したと言えます。

歴代名人たちも数多くの詰将棋を創作しましたが、初期の作品の多くが実戦型に属しています。五代大橋宗桂の時代から、趣向を凝らした詰将棋が誕生し、特に二代伊藤宗印は、作品全てに玉が4段目より上に配置されるというスタイルを確立しました。この頃、名人による詰将棋の方向性が実戦型とは異なる進化を遂げたのです。

名人や各家元が手掛ける詰将棋には実戦型が減少していきましたが、一般の作家たちによる実戦型は依然として多く作成され、元禄時代にはいくつかの詰将棋作品集が出版されました。幕末の棋士である渡瀬荘二郎は、当時の実戦型詰将棋をまとめた作品集『待宵』を出版し、文化の継承に貢献しました。

第二次世界大戦後には、名人となった塚田正夫が新聞などで多くの実戦型詰将棋を発表しました。彼の作品には、実戦でありうる局面に必ず巧妙な手が盛り込まれており、そのスタイルは多くの将棋ファンに支持されました。

囲いの表現

実戦型詰将棋には、玉が特定の囲いに囲まれている局面も存在します。例えば、美濃囲いや矢倉囲い、穴熊囲いなどに関連する問題が多く見られます。このような形態は将棋の手筋を学ぶために本に収録されることが一般的であり、実践的な応用を意図しています。しかし、時に持ち駒が余るケースもあり、必ずしも詰将棋として完璧には構成されていないことがあります。

「長い詰みより短い必至」という言葉が示すように、実戦では短い手数で解決できる場合が多いです。このような問題は「陣形図式」とも呼ばれ、特定の条件を満たした局面を対象にしています。

陣形図式と実戦初形

実戦型詰将棋の特徴を拡張した「陣形図式」は、玉の配置において駒が整然と並べられた問題のことを指します。伊藤看寿の作品が特に知られており、また小沢正広は無仕掛けの「夏の陣」という独創的な作品を発表し、評価を受けました。また、「玉方実戦初形」や「攻方実戦初形」という用語もあり、それぞれ玉方または攻方の駒が初期配置の状態で並べられた問題を指しています。

これらを通じて、実戦型詰将棋は将棋の戦略的思考を育む重要な手段であり、多くのファンに親しまれ続けています。

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