室蘭艦砲射撃

室蘭艦砲射撃

室蘭艦砲射撃は、第二次世界大戦末期の1945年7月15日に、アメリカ海軍の艦艇が北海道室蘭市一帯に行った艦砲射撃です。

概要

室蘭市は、周辺に鉄鉱石の鉱山や炭鉱が存在し、良質な港湾を有していたため、戦前から日本製鐵輪西製鉄所や日本製鋼所室蘭製作所といった重工業の拠点が置かれていました。特に日本製鋼所室蘭製作所は、当時高射砲などの兵器を製造しており、戦略上重要な都市として、戦争末期には攻撃目標となりました。

1945年7月中旬以降、アメリカ海軍の機動部隊は日本本土に対する大規模な攻撃作戦を展開。7月14日には北海道空襲が行われ、室蘭もその標的となりました。室蘭沖では、日本の海防艦や貨物船が撃沈、損傷する被害を受けています。

7月14日から15日の夜にかけて、室蘭攻撃のため、第38任務部隊から砲撃部隊である第34.8.2任務隊が派遣されました。オスカー・C・バジャー少将が指揮するこの部隊は、戦艦「アイオワ」「ミズーリ」「ウィスコンシン」、軽巡洋艦「アトランタ」「デイトン」、そして8隻または9隻の駆逐艦で構成されていました。7月15日、これらの戦艦は28,000-32,000ヤードの距離から、室蘭に向けて860発もの16インチ砲弾を発射しました。

当初の攻撃目標は日本製鋼所室蘭製作所でしたが、事前に準備されていた油による煙幕により、アメリカ軍偵察機は着弾による被害と誤認。戦艦側との交信の結果、攻撃目標は日本製鐵輪西製鉄所へと変更され、結果として日鉄側がより激しい砲撃を受けることとなりました。日鉄の各工場は屋根や側壁が破壊され、鉄製の防空壕にも砲弾の破片が侵入、跳弾により従業員が死傷するなどの被害が発生しました。

被害状況

日本製鋼所に対しては、16インチ砲弾414発が発射され、構内に64発、社宅に130発が着弾。死者112名、重軽傷者88名という人的被害を受けました。工場施設も大きな損害を受け、第4鍛錬工場は操業不能となり、終戦まで再開されることはありませんでした。一方、日本製鐵には446発が発射され、構内に173発、社宅地区に138発が着弾。死者182名、重軽傷者52名という被害が発生しました。二号高炉、中央発電所、製鋼工場、工作工場などが大きな被害を受けています。

1時間に渡る砲撃で860発の砲弾が発射され、その6割以上が市街地に着弾し、御崎町や御前水町、輪西町、中島本町を中心に485人（うち非戦闘員439人）の犠牲者を出しました。

当時の室蘭市には、日本陸軍の室蘭防衛隊が配置され、室蘭臨時要塞を建設中でしたが、艦砲射撃を防ぐことはできませんでした。室蘭防衛隊隷下の第8独立警備隊は、15cmカノン砲などの重砲を装備しており、港湾に接近する艦艇への抑止力として期待されていましたが、艦隊は港口とは異なる方向からの遠距離射撃を行ったため、無力でした。

現在、室蘭八幡宮など市内数カ所には慰霊碑が建立され、艦砲射撃が行われた7月15日には、多くの関係者が慰霊に訪れています。この出来事は、戦争の悲惨さを伝えるとともに、平和への祈りを新たにする日となっています。

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