宮下英樹

宮下英樹は、1976年石川県七尾市に生まれました。高校卒業後、富山大学工学部に進学するも、漫画家を志し中退。在学中からコミック誌への投稿を始め、編集者の勧めにより青年誌へ活躍の場を移します。いくつかの雑誌での入賞を経て、漫画アシスタントの仕事を得て上京、竹下けんじろうのアシスタントとして働きながら、漫画家としての道を模索しました。

2001年、宮下は「第44回ちばてつや賞大賞」を受賞し、『週刊ヤングマガジン』掲載の「春の手紙」でデビューを果たします。翌2002年からは、相撲を題材にした初の連載「ヤマト猛る!」を開始しますが、全6巻で完結となります。この作品は、本人のインタビューによると、期待されたほどのヒットには至らなかったとのことです。

転機となったのは2004年。担当編集者との戦国時代に関する熱い議論がきっかけとなり、「新説を取り入れた歴史作品」の制作を決意します。同年4月、『週刊ヤングマガジン』にて、豊臣秀吉の旗本であり、出石藩の藩祖である仙石権兵衛秀久を主人公とした「センゴク」の連載を開始しました。この作品では、ルイス・フロイスの『日本史』や太田牛一の『信長公記』といった史料を徹底的に研究し、合戦跡や城跡を実際に探索するなど、丹念な取材を重ねています。さらに、積極的に新説を取り入れ、独自の解釈を加えることで、歴史漫画の新たな可能性を切り開きました。

「センゴク」は、ヤングマガジン誌の人気作品となり、「センゴク」、「センゴク天正記」、「センゴク一統記」、「センゴク権兵衛」と、4部にわたる大作として展開されました。また、別冊ヤングマガジンと月刊ヤングマガジンでは、今川義元を主人公とした「センゴク外伝 桶狭間戦記」も連載されました。

宮下の作品は、幼少期に影響を受けたという樋口一葉の『たけくらべ』にみられるような、人間ドラマを描くことに重きを置いています。また、漫画家として尊敬する人物として松本剛や平田弘史の名前を挙げています。2012年には、ちばてつや賞出身者として、ちばてつやの講演会で司会を務めました。

歴史への造詣の深さから、滋賀県彦根市の夢京橋あかり館で開催された石田三成をテーマにした展覧会「MITSUNARI 11」では、依頼を受け、本編ではまだ小姓である頃の三成の肖像画を制作しました。また、歴史関連の書籍や番組への出演も多く、2014年にはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』に黒田家家臣役として特別出演も果たしています。さらに、『軍師官兵衛』で主演を務めた岡田准一が「センゴク」の愛読者であった縁から、制作スタッフのTシャツをデザインするなど、多方面で活躍しています。仙石氏の縁者から仙石氏ゆかりの鍔を譲り受けたというエピソードからも、作品への深い愛情が伺えます。

宮下英樹は、「センゴク」シリーズ以外にも、「大乱 関ヶ原」や「神聖ローマ帝国 三十年戦争」といった歴史を題材にした作品を手掛けています。挿絵の仕事も行っており、その作風は、歴史の重厚さと人間ドラマを巧みに融合させた独特の世界観で、多くの読者を魅了し続けています。

作品リスト

春の手紙（『週刊ヤングマガジン』、講談社、2001年、デビュー作）
ヤマト猛る!（『週刊ヤングマガジン』、講談社、2002年 - 2003年、全6巻）
センゴク（『週刊ヤングマガジン』、講談社、2004年 - 2007年、全15巻）
センゴク 天正記（『週刊ヤングマガジン』、講談社、2008年 - 2012年、全15巻）
センゴク 一統記（『週刊ヤングマガジン』、講談社、2012年 - 2015年、全15巻）
センゴク権兵衛（『週刊ヤングマガジン』、講談社、2015年 - 2022年、全27巻）
センゴク外伝 桶狭間戦記（『別冊ヤングマガジン』→『月刊ヤングマガジン』→『週刊ヤングマガジン』、2007年 - 2010年、全5巻）
大乱 関ヶ原（『コミック乱』2022年10月号 - 、既刊4巻）
神聖ローマ帝国 三十年戦争（『歴史群像』2022年10月号 - 、既刊2巻）

挿絵

『センゴク兄弟』原作：東郷隆
* 『信長と往く 転生商人の天下取り』原作:入月英一

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