宮城野 (年寄名跡)

年寄名跡「宮城野」

相撲界において、年寄名跡は協会員が引退後も日本相撲協会に残るための資格であり、部屋経営など指導者としての活動を可能にする重要な継承名です。「宮城野（みやぎの）」も、このような歴史と伝統を持つ年寄名跡の一つとして知られています。

この名跡の起源は、江戸時代にまで遡ると考えられています。初代の襲名者として伝えられているのは、宮城野錦之助という力士です。

宮城野錦之助は、かつて東北地方の要衝であり、伊達家の城下町として栄えた仙台藩に抱えられていたと記録されています。江戸時代、各地の大名が力士を抱え、その威信を示すという慣習がありました。仙台藩に抱えられていたという事実は、当時の相撲が単なる興行としてだけでなく、権力者にも深く関わる存在であったことを示唆しています。宮城野錦之助は、藩の威光を背負って土俵を務めた力士であったと推測されます。

彼の四股名、そして後に年寄名跡となった「宮城野」という名称は、その出身やゆかりの地と深く関連していると言われています。具体的には、仙台城下町の東側に広がる地域、現在の仙台市宮城野区にあたる風光明媚な「宮城野」の地名から採られたとする説が有力です。美しい野の風景が広がるこの地の名が、力士の四股名、そして永く受け継がれる年寄名跡として定着したのは、当時の人々にとってこの地が特別な意味を持っていたからかもしれません。

「宮城野」の名跡は、初代・宮城野錦之助以降、長い相撲史の中で代々受け継がれてきました。この名跡を襲名した年寄の中には、自らの相撲部屋を興し、後進の指導育成に尽力した、いわゆる部屋持ち親方も複数存在しました。彼らは「宮城野部屋」を主宰し、多くの関取や力士を育て上げ、相撲界の発展に貢献してきました。

「宮城野」という名称は、年寄名跡だけでなく、相撲界の他の要素にも関連が見られます。例えば、上述の宮城野部屋は、この年寄名跡がそのまま部屋名となったものです。また、過去には宮城野馬五郎のように、「宮城野」を四股名に持つ力士も存在しました。これらの存在は、「宮城野」という名が単なる年寄の名前にとどまらず、相撲界全体にわたる系譜や繋がりを示す重要なキーワードとなっていることを示しています。

このように、年寄名跡「宮城野」は、初代力士の出自や地名に由来し、江戸時代から現代に至るまで、相撲部屋の名称や力士の四股名とも関連しながら、相撲界の歴史の中で脈々と受け継がれてきた伝統ある名称です。それは相撲協会員としての資格を示すだけでなく、過去の偉大な力士や親方の業績、そして仙台という特定の地域との歴史的な繋がりを今に伝える存在と言えるでしょう。

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