宮川一笑

宮川 一笑（みやがわ いっしょう）

元禄2年（1689年）から安永8年（1780年）まで生きた宮川一笑は、江戸時代の著名な浮世絵師として知られています。彼は、浮世絵の名門である宮川派に籍を置き、特に美人画を中心に多くの作品を残しました。一笑の本姓は藤原で、後に県氏を名乗り、通称は喜平次です。彼には一笑以外にも湖辺斎、安道、蘇丸など様々な号がありました。

来歴

一笑は宮川長春に師事しました。長春とともに、二人は宮川派を代表する存在となります。彼は江戸の芝田町二丁目で家主を務めており、その活躍は享保から彼の死に至るまでの長い期間にわたりました。特に一笑は、肉筆美人画に特化し、多数の作を世に送り出しました。

1750年、寛延3年に長春が日光東照宮の彩色修理をしていた際、報酬を巡るトラブルが起こり、稲荷橋狩野家に暴行を受ける事件が発生しました。一笑は長春の子である長助と共に、稲荷橋狩野家に斬り込み、当主の狩野春賀を含む三人を傷つけました。この事件によって、一笑は1767年に新島へ流罪となり、当時64歳でした。

新島では、彼は島民のために七福神や仏画を描き続け、生計を立てました。流人生活の中でも、宮川の画姓を隠し、本姓の藤原または県氏を名乗り、「安道」や「蘇丸」という号を使用しました。また、絵を学びたいという島民や仲間に教えを授けたと言われています。しかし、一生涯を新島で過ごし、赦免されることなく91年の生涯を閉じました。

画風

宮川一笑の作品は約60点残存しており、その大部分が江戸で活動していた時期に集中しています。彼の絵は紙本が多く、師の長春に比べると使用する絵の具の質は劣りますが、一笑自身の技量と感性がしっかりと表れています。

特に彼の描く美人画には、その時代ごとの髪型やファッションが反映されており、作品ごとに面貌の表現に差異があります。初期の作品では、柔らかな表情を持つモデルが描かれており、下膨れの顔や自然なカーブを描く眉が特徴的ですが、徐々に顔立ちが変化し、より鋭い印象に移行します。

一笑の筆致は力強く、彩色も大胆であり、彼特有の流派としてのスタイルを確立しました。特に「吉原歳旦の図」と呼ばれるシリーズが有名で、これらの作は同じ場面を描きつつも、人物の配置などに工夫が見られ、一笑の独自性が際立っています。この作品群は、享保の後期から元文、寛保の中頃まで制作されたとされています。

多様な技法やスタイルを取り入れた宮川一笑の作品は、後の浮世絵師たちにも影響を与え、彼の名は今も評価されています。

もう一度検索