宮田和明

宮田和明氏は、昭和12年（1937年）6月5日に生を受け、平成22年（2010年）2月5日にその生涯を閉じた、日本の著名な社会福祉学者です。郷里は愛知県豊橋市で、地元で基礎的な教育を受け、学問への道を歩み始めました。

高等教育は、昭和36年（1961年）に名古屋大学経済学部を卒業したことから始まります。さらに専門性を深めるため、同大学院経済学研究科に進学し、昭和38年（1963年）に修士課程を修了しました。その後、昭和41年（1966年）には博士課程において所定の単位を取得し、満期退学しています。経済学で培った知見を基盤に、社会福祉学という新たな領域での研究に取り組んでいくことになります。

教育・研究者としてのキャリアは、まず母校である名古屋大学経済学部での助手職からスタートしました。そして昭和44年（1969年）、日本福祉大学の講師として着任し、社会福祉学の専門家としての道を本格的に歩み始めます。同学においては、昭和51年（1976年）に助教授へ昇任し、昭和58年（1983年）には教授となりました。長きにわたり教壇に立ち、多くの後進の育成に貢献しました。

大学の運営においても中心的な役割を担いました。平成3年（1991年）には社会福祉学部長に就任し、学部の教育・研究体制の充実に尽力しました。平成5年（1993年）には副学長に昇任し、学長を補佐する要職を務めました。そして、平成15年（2003年）から平成21年（2009年）までの間、日本福祉大学の第5代学長として最高責任者の重責を担いました。学長退任後は名誉教授の称号を授与され、その功績が称えられています。

宮田氏の研究の核心は、現代日本の社会福祉政策論にありました。この分野における長年の研究成果は、平成10年（1998年）に東洋大学から授与された博士（社会福祉学）の学位論文「現代日本社会福祉政策論」として結実しています。これは、日本の社会福祉制度や政策の歴史的変遷、現状、そして課題を深く分析した重要な業績です。

その学術的な知見は、多数の著書や共編著として広く共有されています。単著としては、自身の研究テーマを体系的にまとめた『現代日本社会福祉政策論』（ミネルヴァ書房、1996年）があります。また、多くの研究者・実務家と共同で編纂した書籍も豊富です。以下にその一部を挙げます。

『社会福祉の人間的原理 現代福祉を哲学する』（福田静夫共編、文理閣、1990年）
『社会福祉実習』（加藤幸雄,野口定久,柿本誠,小椋喜一郎,丹羽典彦共編、中央法規出版、1991年）
『社会福祉と主体形成 90年代の理論的課題』（河合幸尾共編、法律文化社、1991年）
『転換の時代の社会福祉 日本の論点・イタリアの経験』（福田静夫共編、文理閣、1996年）
『在宅高齢者の終末期ケア 全国訪問看護ステーション調査に学ぶ』（近藤克則,樋口京子共編著、中央法規出版、2004年）
『図説日本の社会福祉』（真田是,加藤薗子,河合克義共編、法律文化社、2004年）
『現代の社会福祉入門』（柿本誠,木戸利秋,小松理佐子,竹中哲夫,山口みほ共編著、みらい、2006年）
『エンサイクロペディア社会福祉学』（仲村優一他監修、岡本民夫,田端光美,濱野一郎,古川孝順共編、中央法規出版、2007年）
* 『社会福祉専門職論』（加藤幸雄,牧野忠康,柿本誠,小椋喜一郎共編、中央法規出版、2007年）

これらの著作群は、社会福祉の理論から政策、教育、実践に至るまで、幅広い領域を網羅しており、その学術的な影響力の大きさを物語っています。

宮田和明氏は、教育、研究、大学運営という多角的な視点から、日本の社会福祉学の発展に尽力しました。その功績は、学界だけでなく、福祉実務の現場にも大きな影響を与えています。昭和後期から平成にかけての社会構造の変化の中で、福祉のあり方を深く探求し続けた研究者・教育者として、その名は長く記憶されるでしょう。

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