家庭の事情 ネチョリンコンの巻

映画『家庭の事情 ネチョリンコンの巻』の概要

1954年7月28日に東宝系で公開された映画『家庭の事情 ネチョリンコンの巻』は、モノクロームで視覚的にも特徴的な作品です。本作はトニー谷が主演する『家庭の事情』シリーズの第4作目であり、同時にこのシリーズの最終回でもあります。映画は当時の社会情勢を反映し、ビキニ事件を背景にしたストーリーが展開されます。

ストーリーのあらすじ

物語の舞台は、太平洋宣伝会社のパチンコ屋の2階で、社長の戸仁井谷夫（演：トニー谷）が主人公です。彼の元に、桜ヶ浜の「海浜ホテル」を運営する坂巻敬介から依頼が飛び込んできます。桜ヶ浜には放射能を含むマグロが打ち上げられ、その影響で観光客が激減し、ホテルが危機に直面していたのです。

戸仁井は早速、ブレーンの土倉五郎を「バッタフライ」という名の水泳名人に扮装させ、観光客を呼び込もうと計画します。桜ヶ浜に到着した二人は、坂巻の娘冬子と対面し、さらに水泳エキシビジョンが企画されます。しかし、五郎は水泳が出来ないため、戸仁井は少々無理をして彼を海に放り込み、観客の目の前で泳がせるという策を講じます。これが功を奏し、エキシビジョンは大成功に終わり、戸仁井は冬子の心をつかむことに成功します。

しかし、坂巻の部下である黒井部長はこの状況を快く思わず、ホテルを手中に収めるため、冬子との結婚を画策します。さらに、放射能マグロの件も彼の陰謀の一端であったことが判明します。彼は仲間と共に戸仁井の作戦を妨害し、水着コンテストを混乱に陥れます。

戸仁井は再び頭を悩ませますが、次なる策として「ネチョリンコン」と呼ばれる架空の大富豪を設定し、「花嫁コンテスト」を開くことにします。当日、ネチョリンコンは実は戸仁井自身が扮するキャラクターで、彼は一人二役を演じることになります。コンテストを通して彼の作戦が進む中、黒井は逆上し、冬子をさらって逃げようとします。

クライマックスと結末

大混乱に陥った状況の中、戸仁井はネチョリンコンに扮したままで冬子を救出するためにヨットに乗り込み肉弾戦を繰り広げます。最終的に冬子を救った戸仁井は、彼女にネチョリンコンは架空の存在であることを伝えますが、冬子は彼の言葉を信じようとしません。

物語の終盤、桜ヶ浜は活気を取り戻し、戸仁井は冬子に向かって「ネチョリンコンは世界一の幸せ者だ」とつぶやきます。その言葉を受けて、冬子はただ泣くことしかできず、戸仁井は心の中の思いを秘め、桜ヶ浜を後にします。

スタッフとキャスト

本作の原作は三木鮎郎、脚本は大畠玉樹、監督は小田基義で、撮影や音楽まで多くの才能が結集しています。トニー谷をはじめ、春風すみれや谷晃、有木山太など豪華なキャストが揃っています。この映画は、当時の風刺的な視点が光り、コメディとしても高い評価を得た作品です。

\#\# まとめ

『家庭の事情 ネチョリンコンの巻』は、社会問題を題材にしながらもユーモアにあふれたストーリーで多くの観客の心をつかみました。観光地の復興を描いたこの映画は、当時の時代背景を知るうえでも貴重な作品と言えるでしょう。

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