谷晃

名脇役・谷晃：波乱の生涯と東宝映画黄金期を彩った名優

谷晃（たに あきら、1910年9月22日 - 1966年8月11日）は、昭和期の日本を代表する名脇役俳優であり、演出家としても活躍した人物です。本名は道家巻蔵。大阪府大阪市出身。

谷は大阪市立東商業学校（現・大阪市立東商業高等学校）卒業後、様々な職を転々とした後、1934年に新響劇場を設立。その後、1936年には大阪協同劇団に参加し舞台俳優として経験を積みました。1941年には東宝に入社し、俳優活動と並行して演出家としても手腕を発揮しました。

1940年、映画『船出は楽し』で念願の初主演を果たした谷ですが、その後は脇役としての出演が多くなります。しかし、その個性的な演技は高く評価され、多くの作品で重要な役割を担いました。黒澤明監督の代表作『七人の侍』への出演も記憶に新しいところです。

東宝映画を中心に活躍し、その出演作品数は映画だけでも110本以上に及びます。当時の知名度は抜群で、多くの観客に愛されました。『ゴジラ大百科 [メカゴジラ編]』では「腹に一物ある小悪党が得意」と評されており、その演技の幅広さが伺えます。

1966年、東映との専属契約を解消し、テレビドラマを中心に活躍の場を広げようと意欲的に活動を開始します。しかし、その矢先に持病の高血圧による言語障害を発症。入院治療を行いながら活動を続けましたが、同年8月11日、東京市北多摩郡狛江町覚東の自宅で、55歳という若さで自らの命を絶ちました。遺作となったのは同年公開の映画『クレージーの無責任清水港』やテレビ特撮ドラマ『ウルトラQ』などです。

自殺の原因については、持病や後遺症による俳優業の不振、高額な治療費による借金など複数の要因が考えられていますが、遺書がなく詳細は不明です。周囲からは亡くなる前日まで元気だったと証言されており、親友たちを驚愕の悲しみに突き落としました。

谷晃の娘の子（孫）にあたるのは、落語家の柳亭こみちです。（柳亭こみちは1974年生まれ）。

主な出演作品

谷晃が出演した作品は多岐に渡ります。ここでは、代表的な作品を列挙します。

映画

船出は楽し (1940年、東宝)
酔いどれ天使 (1948年、東宝)
七人の侍 (1954年、東宝)
宮本武蔵シリーズ (1954年、1955年、東宝)
隠し砦の三悪人 (1958年、東宝)
野獣死すべし (1959年、東宝)
独立愚連隊 (1959年、東宝)
用心棒 (1961年、東宝)
モスラ対ゴジラ (1964年、東宝)
クレージーの無責任清水港 (1966年、東宝)

その他、次郎長三国志シリーズ、落語シリーズなど、多数の作品に出演しています。時代劇、現代劇、コメディーなど、幅広いジャンルで活躍しました。

テレビドラマ

宮本武蔵 (1957年)
ウルトラQ (1966年、TBS)

数多くのテレビドラマにも出演し、晩年はテレビでの活躍も期待されていました。

俳優・田中友幸との友情

谷晃は、後に東宝映画社長となる俳優兼プロデューサーの田中友幸と親友の間柄でした。同じ俳優の金平軍之助や映画監督の稲垣浩とも親しく、東宝映画黄金期を支えた仲間の一人として、映画史に名を刻んでいます。

谷晃の短い生涯は、数々の名作への出演と、持ち前の演技力で多くの観客を魅了した証です。彼の存在は、日本の映画史、そして昭和の時代を彩る重要なピースだったと言えるでしょう。 彼の早すぎる死は、多くのファンに惜しまれ、その名前は今も語り継がれています。

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