家族の肖像 (映画)

映画『家族の肖像』

『家族の肖像』（かぞくのしょうぞう、原題: Gruppo di famiglia in un interno）は、1974年に公開されたイタリア・フランス合作の映画で、監督を務めたのはルキノ・ヴィスコンティです。この作品は、老教授と新世代の若者たちとの複雑な関係を描写しており、ヴィスコンティの代表作として高く評価されています。映画の英語タイトル「Conversation Piece」は、18世紀のイギリスで流行した家族団らんを描いた絵画を指しています。

ストーリーの概要

物語は、ローマに住む孤独な老教授（演じるのはバート・ランカスター）が、閉ざされたアパルトマンの中で静かに暮らす様子から始まります。教授は絵画の研究と収集に没頭し、管理人のドメニコや家政婦のエルミニアと共に、平穏な生活を送っています。しかし、その安穏は新たに訪れた若者たちによって脅かされます。ビアンカ（シルヴァーナ・マンガーノ）と彼女の娘リエッタ（クラウディア・マルサーニ）、リエッタの同居人ステファノ（ステファノ・パトリッツィ）、そしてビアンカの愛人コンラッド（ヘルムート・バーガー）が上階の部屋を借りるために教授を訪れます。

最初は静かな生活が壊されることを恐れ、教授は彼らの要求を断り続けます。しかし、若者たちのしつこい懇願により、最終的にコンラッドを部屋に住まわせることを承諾します。教授は、芸術に対する彼の理解が自分と共通するものであることを知り、次第に興味を持つようになります。コンラッドはかつて学問に情熱を注いでいた青年でしたが、左翼思想に傾倒し、過激な行動に出て学業を放棄した人物でもありました。彼の存在は教授に新たな視点を与えるものの、同時に新しい価値観との衝突を引き起こします。

ある晩、教授は若者たちを夕食に招待します。しかし、ビアンカの夫に関する話題が出た途端、意見の対立が激化し、ステファノとコンラッドは言葉の応酬から暴力沙汰に発展します。教授はその場にいたものの、何もできずに見ていることしかできません。結局、コンラッドは居を去り、「家族を作ることができたらよかった」と悔いを口にします。翌日、コンラッドは遺していった手紙を捨て上階で爆発に巻き込まれ、教授に衝撃を与えます。

映画の影響と評価

日本では、ヴィスコンティの死後に1978年に公開され、驚異的なヒットを記録しました。この映画の成功をきっかけに、ヴィスコンティの作品が再評価され、広く知られるようになります。『家族の肖像』は、1979年のキネマ旬報ベスト・テンでは第1位を獲得し、数々の賞を受賞しました。

音楽にはイヴァ・ザニッキの『Testarda io』やモーツァルトの交響曲が使用されており、物語の流れに華やかさを加えています。また、物語の中では当時のイタリアにおける社会問題や、右派テロリズムと左翼運動の対立が具体的に描かれています。

キャスト

主要キャストには、バート・ランカスターの他に、シルヴァーナ・マンガーノ、クラウディア・マルサーニ、ステファノ・パトリッツィ、ヘルムート・バーガーが名を連ねています。特に、クラウディア・マルサーニは当時15歳で、前年にミス・ティーン・イタリアに選ばれたばかりでした。

総じて、『家族の肖像』は単なる世代間の対立を超え、家族の絆や社会的背景を掘り下げた意義深い作品として、現代でも語り継がれています。

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