家族法

家族法とは

家族法とは、日本の民法における第4編「親族」と第5編「相続」を合わせた講学上の用語であり、家族に関する身分関係と財産関係を包括的に扱う法分野です。夫婦、親子、親族間の権利義務や、相続に関する事項などを定めています。この概念は、日本特有の「家」制度に深く根ざしており、親族法と相続法を一体として捉える点が特徴的です。

家族法の対象範囲

具体的には、以下の内容を規定しています。

夫婦関係：婚姻、離婚、夫婦間の財産関係（夫婦財産制、財産分与など）
親子関係：実子、養子の関係、親権、後見、扶養義務など
親族関係：親族の範囲、扶養、相続など

比較法上の考察

英語の "family law" やドイツ語の "Familienrecht" も「家族法」と訳されますが、その内容は各国の法体系によって異なります。日本の家族法のように親族法と相続法を一体として捉える考え方は、比較法的に見ると異例であるという指摘もあります。

例えば、フランス民法典では、親族法に相当する規定は「人事」に関する部分に、相続法に相当する規定は「財産取得」に関する部分に分類されています。これは、身分法的な親族法と財産法的な相続法を区別する考え方に基づいています。

ドイツ民法典では、日本と同様にパンデクテン方式を採用しており、第4編が「家族法」にあたりますが、第5編の相続に関する法は、財産法と家族法の交錯領域として捉えられています。このように、親族法と相続法を一体として捉える考え方は、必ずしも一般的ではありません。

日本における家族法の形成

日本で家族法が親族法と相続法を一体とする概念として成立した背景には、以下の要因があります。

1. 家制度の存在：旧民法では、親族法は家制度を基盤としており、相続法も家督相続を主としていたため、両者が不可分の関係にあった。
2. 法典編纂の経緯：旧民法の起草において、フランス人のボアソナードは親族法と相続法に関与せず、日本人が起草した。
3. 法律の制定過程：現行民法では、第4編と第5編が別冊として定められた。
4. 身分行為の概念：中川善之助によって提唱された身分行為の概念が、家族法における法原理の独自性を強調した。

これらの要因から、親族法と相続法の上位概念として家族法が形成されました。しかし、日本国憲法の施行によって家制度が廃止されたことで、現在では親族法と相続法の不可分性は薄れてきています。また、比較法の観点からも、親族法のみを家族法と呼ぶべきとする見解が有力になっています。

家族法をめぐる課題

家族法は、時代の変化に伴い、家族の在り方や社会情勢の変化と法的安定の要請の間で、常に揺れ動く法分野です。

例えば、選択的夫婦別姓制度の導入は、男女共同参画の観点から求められる一方で、現行制度の維持を望む声も存在し、議論が続いています。このように、家族法は、社会の変化と伝統的な価値観の間で、常に調整を求められる分野であると言えます。

まとめ

家族法は、日本の家族や親族の関係を規定する重要な法律分野です。しかし、その概念や範囲は、時代や社会の変化とともに変容し続けています。家族法を理解することは、現代社会における家族のあり方や、社会の多様性を理解する上で不可欠であると言えるでしょう。

脚注

関連項目

大韓民国の家族法
民法
夫婦別姓
相続

外部リンク

* 『家族法』 - コトバンク

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