家近良樹

家近良樹

家近良樹（いえちか よしき、1950年3月 - ）は、日本の歴史学者であり、大阪経済大学経済学部教授を務めています。専門は日本近代政治史、中でも幕末史研究に力を入れています。

略歴

大分県出身の家近氏は、1973年に同志社大学文学部を卒業。その後、1982年に同大学院文学研究科博士課程文化史学専攻を修了（単位取得満期退学）しました。1997年には、「幕末政治と倒幕運動」の研究で中央大学より博士（史学）の学位を取得しています。大阪経済大学では、講師、助教授を経て教授に就任しました。

一会桑政権論

家近氏の研究における重要な視点の一つが、「一会桑政権」という歴史概念です。これは、従来の薩長と幕府の対立という単純な構図では捉えきれない幕末期の政治状況を捉えるためのものです。「一会桑」とは、「一」＝一橋慶喜、「会」＝会津藩主・松平容保、「桑」＝桑名藩主・松平定敬を指します。家近氏は、薩長史観では見過ごされがちなこの三者の幕末における役割を再評価することを主張しています。

著作

家近氏は、数多くの著作を発表しています。主なものとして、以下が挙げられます。

『幕末政治と倒幕運動』（吉川弘文館、1995年）
『浦上キリシタン流配事件　キリスト教解禁への道』（吉川弘文館、1998年）
『孝明天皇と「一会桑」　幕末・維新の新視点』（文藝春秋、2002年）
『江戸幕府崩壊　孝明天皇と「一会桑」』（講談社学術文庫、2014年）
『徳川慶喜』（吉川弘文館、2004年）
『その後の慶喜　大正まで生きた将軍』（講談社選書メチエ、2005年、筑摩書房、2017年）
『幕末の朝廷　若き孝明帝と鷹司関白』（中央公論新社、2007年）
『西郷隆盛と幕末維新の政局　体調不良問題から見た薩長同盟・征韓論政変』（ミネルヴァ書房、2011年）
『徳川慶喜』（吉川弘文館、2014年）
『老いと病でみる幕末維新　人はどのように生きてきたか』（人文書院、2014年）
『ある豪農一家の近代―幕末・明治・大正を生きた杉田家』（講談社選書メチエ、2015年）
『西郷隆盛　人を相手にせず、天を相手にせよ』（ミネルヴァ書房、2017年）
『西郷隆盛 維新150年目の真実』（NHK出版新書、2017年）
『歴史を知る楽しみ　史料から日本史を読みなおす』（ちくまプリマー新書、2018年）
『酔鯨山内容堂の軌跡　土佐から見た幕末史』（講談社現代新書、2021年）

これらの著作を通して、家近氏は幕末史研究に新たな視点を提起し続けています。特に、従来の研究では十分に光が当てられてこなかった孝明天皇や徳川慶喜といった人物の役割を再評価することで、幕末史の多角的な理解を促しています。

また、史料編纂にも携わっており、

『稽徴録（ケイチョウロク）　京都守護職時代の会津藩史料』（思文閣出版、1999年）
『幕政改革』（吉川弘文館、2001年）
『もうひとつの明治維新　幕末史の再検討』（有志舎、2006年）
『杉田定一関係文書史料集』(大阪経済大学日本経済史研究所)

などの編著があります。

メディア出演

NHKの番組「英雄たちの選択スペシャル」に出演し、西南戦争と西郷隆盛について解説するなど、メディアを通じた歴史の普及にも貢献しています。

関連項目

浦上四番崩れ
大阪経済大学の人物一覧
孝明天皇
西郷隆盛
同志社大学の人物一覧
倒幕運動
徳川慶喜
松平容保
松平定敬
* 明治維新

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