講談社学術文庫

講談社学術文庫について

講談社学術文庫は、1976年6月に創刊された講談社の学術書レーベルです。この文庫は、知識や研究を手軽に身近に感じられることを目指しており、そのシンボルマークには古代エジプトの知識の神であるトートが用いられています。特に人文科学や社会科学に重きを置いており、文庫としての特性を活かしながら、様々な書籍を幅広く出版しています。

出版の特徴

この学術文庫は単行本や選書の再刊に加え、古典の新訳や書き下ろし作品もリリースしています。約40年間で2000冊以上を刊行し、多数の重版も行われています。一方で初版だけで品切れとなった書籍も少なくありませんが、電子書籍版の配信や合本改版として再発売されることもあります。2011年にはiOSアプリ「選書メチエ＆学術文庫」が登場し、電子配信の領域にも進出しています。

また、2018年からは大文字版のプリントオンデマンド（POD）サービスも開始し、求めに応じて1冊から注文できるようになりました。これにより、より多くの読者が自身のニーズに合わせた形式で学術書を手に入れることが可能になっています。

発足以来の方針と内容

講談社学術文庫は、創刊以来「学術をポケットに」、つまり学術的な内容を身近に感じられる作品を中心に扱っています。特に国文学に関しては、久松潜一や池田亀鑑、今泉忠義など著名な国文学者たちによる古典文学の現代語訳や注釈入りの作品が多く、他では手に入りにくい文学作品へのアクセスを提供しています。

2010年代には、中国古典文学の名作である『三国志演義』や『水滸伝』も完訳され、学術的な研究も進められてきました。哲学や社会科学に関しても、カントやプラトンなどの古典から20世紀の思想に至るまで、多様な作品が取り扱われています。

特に創刊された当初は保守的な著者陣が多かったものの、時代と共にラインナップは多様化し、ラディカルな視点を持つ著者による作品も収録されるようになりました。この変化は学問分野における幅広い視点の重要性を反映していると言えるでしょう。

自然科学や工学書も

自然科学や工学分野の本は、姉妹シリーズのブルーバックスから発行されていますが、講談社学術文庫には朝永振一郎の『鏡の中の物理学』や湯川秀樹の『物理講義』など、長年にわたって支持されている入門書も含まれています。これらの書籍は、一般読者にも理解しやすい内容でありながら、深い学術的な知見を提供しています。

このように、講談社学術文庫は手軽に高水準の学術書を提供することで、多くの読者に支持されています。受験書の取り扱いはないものの、他社からの優れた学習参考書や辞典類の再刊も行い、常に学問のための良質な資料を提供する姿勢を崩しません。これからも、学術界における重要なレーベルとして、その役割は続いていくでしょう。

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