家門

家門とは

家門（かもん、独: Geschlecht）とは、歴史学において男子直系を根幹とした血縁集団を指す用語です。単なる血縁関係にとどまらず、社会的な地位や権力、財産とも密接に結びついた、歴史的に重要な概念です。

概要

家門は、遠い過去に遡る系譜と、明確な血統意識を持つ男系の集団です。その創設には、王位や官職の獲得、領地の取得、城塞の建設といった歴史的な出来事が伴います。そのため、家門は血縁関係だけでなく、所領、官職、位階といった人的要素以外の拠り所も持ちます。中世初期には男子直系の家系に限られることが多かったのですが、中世盛期には複数の家系を含むようになりました。

歴史的展開

男系によって構成される貴族家門は、カロリング朝末期に形成されました。これは官職やレーエンが世襲化された結果であり、大公家門、辺境伯家門、伯家門などが誕生しました。その後、自由貴族においても、官職や位階、領地を基盤として家門形成が進み、中世盛期には下級貴族や都市の支配階級にも家門が広がりました。特に11・12世紀頃には、城塞の建設が家門形成を促進し、支配地や城塞に由来する家門名が多く見られます。また、家門の結束を固めるため、教会や修道院が建立され、世襲的なフォークタイが家門で所有され、最年長者に委ねられました。

代表的な家門

カロリング朝以前
アマール家（東ゴート王国）
メロヴィング家（フランク王国）
アギロールフィング家（バイエルン）
カロリング朝以後
ヴェッティン家
ハプスブルク家
ホーエンシュタウフェン家
ホーエンツォレルン家

中世国家における役割

中世の民衆意識では、偉業を成し遂げるには個人の資質だけでなく、血統的な資質も必要と考えられていました。この血統の権威は、古ゲルマンの祭司王権の観念に基づくと考えられています。また、11世紀末からフランス王権では、瘰癧（るいれき）の治癒能力が王の特権として主張され、イングランドでも同様の思想が形成されました。これは「治癒者としての王」や「王の治癒奇跡」と呼ばれますが、古ゲルマンの祭司王権との連続性は明確ではありません。このような家門に結びついたカリスマ的な宗教的権威は、国王の霊威（Königsheil）あるいは血統霊威（Geblütsheil）と呼ばれています。

日本の公家社会における家門

中世日本の公家社会では、経済基盤である家領と並び、社会的基盤としての家門が家の存立を支える重要な要素でした。家門とは、家督を有する当主とその管理下にある家業、家職、家記、家屋、寺院、道具、そして当主夫婦や親子を中心とした親族集団を指し、家督とともに継承されるものでした。鎌倉時代前期までは、公家の子弟が分家することで新たな「家」が生まれていましたが、後期には経済的な理由から分割が困難となり、家領の継承をめぐって嫡子と庶子の争いが生じるようになりました。

後醍醐天皇が建武の新政を開始すると、この問題を解消するため、家門管領の権限を持つ家督の移動に際し、家領を家門の経営上不可欠なものと位置づけ、家領全体の安堵を行う方針が打ち出されました。この方針は北朝にも継承され、当主や嫡男が家督継承時や新たな治天の君の登場時に家門と家領の一括安堵を受けるようになり、結果として「家」そのものの安堵の役割を果たすことになりました。これにより、公家社会では家領の単独相続が進み、「家」を安堵する権限を持つ治天の君による公家支配が拡大しました。

室町幕府3代将軍の足利義満は、太政大臣に昇り、さらに治天の君の政治的権限を掌握し、自ら家門・家領一括安堵を行うことで公家社会を支配下に置きました。義満の死後、天皇が家門安堵の権限を回復しましたが、公家社会は軍事力を持たないため、室町幕府や守護大名の軍事力に依存せざるを得ず、天皇が家門を安堵し、将軍が家領を実質的に安堵するという体制が長く続きました。天皇の家門安堵の権能は戦国時代以後も存在し、京都での奉仕を怠る公家を牽制する役割を持っていました。

関連項目

封建制度
貴種
氏族
家柄
ジッペ
* 氏長者

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