所領

所領（しょりょう/そりょう）とは

所領とは、領主や地主が私的に所有し、支配（知行）権を行使する土地のことです。経済的な利益を生み出す一定の領域を指し、主に家屋敷と田畑から構成されますが、山野、荒地、牧、浜なども含まれることがありました。

所領の成立と展開

律令法下では、家地や園地、墾田など私有が認められた土地を除き、所領は本来、国衙領や荘園の一部でした。これらの土地は国衙や本所に年貢を納める義務がありましたが、領主たちは国衙や本所と対立・協調を繰り返しながら、次第に支配権を強めていきました。

所領は、謀反などの重大犯罪によって改易・闕所とならない限り、没収されることはなく、売買、相続、寄進の対象となりました。しかし、その所有や権利を巡る争いも頻繁に発生しました。

鎌倉幕府と所領

鎌倉幕府は、領主を御家人として傘下に加え、軍役などの奉公義務を課す代わりに、安堵状を発給してその知行権を保護しました。また、奉公の功績に応じて新たな所領を恩賞として与えることもありました（御恩と奉公）。

『御成敗式目』では、所領に関する様々な争いについての規定が定められ、御家人としての義務を果たさない者には、所領の没収などの措置が取られました。承久の乱後には、平家没官領や謀反人跡に限定されていた地頭が、上皇方の所領を得て拡大し、「新補地頭」と呼ばれるようになりました。

元寇の際には、守護、地頭だけでなく、寺社本所領、一円荘園の住人にも動員がかけられ、これをきっかけとして、幕府は公家や寺社の荘園にも介入し、戦時体制下で幕府の影響力を強めました。元寇後、幕府は与える所領が不足したため、直轄地を割いて恩賞の土地を捻出しましたが、御家人が満足できるものではありませんでした。

中世期の家訓には、所領の相続や譲渡に関する規定が見られます。例えば、『渋谷定心置文』では、譲られた女子に不当な行為があれば、その田畑を取り上げ、兄弟間で配分することが定められています。また、『渋谷重門置文』では、所領は兄弟に分けず、惣領に全て譲渡するよう定められています。

鎌倉幕府倒幕後、足利尊氏などの功績者には旧北条氏の所領が与えられましたが、一方で、朝敵ではないにもかかわらず所領を没収される武士もいました。そのため、『元弘三年以来没収地返付令』が発令され、所領の返還が行われました。

戦国時代には、川中島の戦いで武田信玄方の武将が戦功を立てたため、信玄から感状や田、刀を与えられています。

江戸幕府と所領

鎌倉幕府以後、江戸幕府に至るまで、所領の没収（改易）は武士に対する最大の威嚇・統制手段として機能しました。例えば、源平合戦後、源義経は平家没官領を得ましたが、源頼朝と対立すると没収されました。

江戸時代には、4代将軍徳川家綱が、万石以上の大名に領地の御朱印を下付する際、それまでに与えられた御朱印を差し出すよう指示しました。寛文4年（1664年）には、統一的に朱印状（領知目録ぞえ）が下付され、これを「寛文印知」といいます。

ただし、徳川御三家や将軍の弟、そして宇和島伊達家の一部には領地判物の発給がされませんでした。これは宇和島伊達家と吉田伊達家の間の相続をめぐる内紛が原因で、幕府の判断が分かれたためです。最終的に吉田藩に独自の朱印状が下付されたのは21年後のことです。

備考

中世史家の本郷和人氏によると、鎌倉終期から室町初期にかけての「首取り注文」では、「首一つ○○（人名）」という記述が多く、首2つといった例は稀であったとされています。これは、首級（功績）に対する所領（恩賞）の比較基準として参考になります。

関連用語

領地
関東御領
関東進止所領
恩地
寺社本所領（一円荘園）
領知目録
寺社領（朱印地・黒印地）
天領
知行国
関東御分国（鎌倉将軍家知行国）
一期分（一生涯＝一代だけ知行が許された所領）
平家没官領
永仁の徳政令
恩賞方
小田原衆所領役帳
朱印状
* 寛文印知

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