寄口 (古代の戸籍)

寄口について

寄口（きこう、よせく、よりく、よりこう）とは、飛鳥時代から平安時代にかけての律令制において、戸籍に記載された者の関係性を示す重要な概念です。この制度の中で、寄口は戸の筆頭者である戸主との関係を表すひとつの表現方法として用いられました。

寄口の概念

寄口は、記録された者が戸主の直系及び傍系の親族や奴婢とは異なる存在であることを示しています。具体的には、その続柄が明示されていないため、個人単位で寄口と記載されるケースや、一家を成している複数の者がまとめて寄口として扱われることがあります。その中には妾が含まれる事例もあるため、一つの家庭の複雑な人間関係を反映しているのです。また、寄口の家族で筆頭者として認識される者に対しては「寄人」という用語が用いられています。

社会的な位置付け

寄口の社会的役割については、さまざまな解釈が存在します。一部の研究者は寄口が戸主とは異なる姓を持つ「異姓寄口」について留意し、これが奴婢とは異なる特殊な奴隷制を示すものであると主張します。対する意見として、寄口については戸籍の編成上の擬制に過ぎないとの見解もあり、このような理解を否定する立場が存在します。この場合、寄口はあくまで制度的な仕組みの中で位置付けられる存在として捉えられています。

さらに、寄口を父系中心の家族構成だけでなく、女系親族の観点からも検討する意見があり、戸主に準ずる形での社会的な位置があったとする見解も少なくありません。このように、寄口については彼らの存在が記載される際の背景やその含意により多面的な議論が行われています。

参考文献

本情報は、田中禎昭の研究「古代戸籍のなかの母子：大宝二年半布里戸籍にみる戸の編成と家族」から得た知見を基にしています。この研究では、大宝2年の戸籍における家族構成やその編成についての詳細が論じられ、寄口という概念がさらに丁寧に論じられています。

関連する項目

寄口に関連する重要な項目には、古代日本の戸籍制度や寄親・寄子、さらには肥猪手などがあります。これらの概念を通じて、古代日本における人間関係の在り方や社会的な役割分担が浮き彫りになります。

このように寄口は、古代日本の戸籍制度における人物の関係性を深く掘り下げるための鍵となる用語です。寄口に関する理解を深めることで、当時の社会構造や家族概念がより明瞭になり、古代日本の人々の生活や価値観を剖析する一助となります。

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