密陀絵

密陀絵の概要

密陀絵（みつだえ）は、日本の伝統的な油彩技法の一つであり、主に漆器や陶磁器の上絵装飾に利用されています。この技法は、江戸時代には油絵やあぶらゑとして知られており、特に駿府が名産地として評判でした。

密陀絵に使用される材料としては、乾性油が主役で、特に荏油が多く用いられます。この乾性油には、乾燥を早めるために鉛の酸化物である密陀僧が加えられます。その結果、密陀絵という名称が生まれました。明治時代初期には、『工芸志料』の中で、法隆寺や正倉院などの伝世品に施された油彩の絵画や装飾が密陀絵と呼ばれるようになり、これ以降、主に古美術や仏教美術の分野において、古代の油彩装飾絵画やその技法を指す言葉となりました。

この技法が発展した背景には、奈良時代の隋・唐時代から中国大陸に伝わった技術が影響しており、平安時代初期頃までに多くの作品が制作されたと考えられています。密陀絵は、単なる上絵装飾技法にとどまらず、白色や淡色の漆だけでは表現しにくい色合いを持ち、強い光沢を引き出すことができるため、非常に多彩な装飾表現が可能です。特に、伝世品においては、実際に密陀僧を使用しているかどうかに関係なく、乾性油を用いた絵画全般が密陀絵と呼ばれることもあります。これは、密陀絵の概念が広がっていることを示しています。

油画と油色

密陀絵に関連する技法として、油画（ゆうが）や油色（ゆうしょく）も挙げられます。

油画

油画は、顔料を乾性油で練り上げた古代の油彩技法の一種で、法隆寺の玉虫厨子扉板絵や橘夫人厨子にその名残が見られます。これらは、密陀絵と同様の技法を用いています。

油色

油色は、膠と顔料を混ぜて描いた上に乾性油を塗布することで光沢を出します。また、正倉院宝物などにもその跡が残されており、密陀絵と同じような美しい仕上がりが特徴です。

歴史的背景

歴史的には、7世紀に書かれた晋書に「油画」として記載された技法が、奈良時代の密陀絵と同一の技法であると考えられています。これからも密陀絵は、日本の伝統美術として評価され、後世に引き継がれるべき重要な技術です。

なお、密陀絵に関する研究資料として、関根秀樹の『7世紀以前の文献にみるアジアの油彩絵画技法と材料について』や、大村西崖の著作『正倉院志』を参照することができます。これらの文献は、密陀絵の技法やその歴史的背景を理解する上で貴重な情報源となるでしょう。

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