富士紡ホールディングス

富士紡ホールディングス株式会社

富士紡ホールディングス株式会社は、東京都中央区に本社を構える日本の持株会社です。その起源は明治時代にまで遡り、現在では繊維、化学工業、エレクトロニクスなど、多岐にわたる分野で事業を展開する企業グループを統括しています。

会社のルーツと発展

企業の始まりは、明治29年（1896年）3月に設立された富士紡績株式会社です。この会社は、日本の近代紡績業を牽引した「六大紡」の一つに数えられるほど有力な存在でした。創業当初は静岡県駿東郡に建設された小山工場で明治31年（1898年）に操業を開始。その後も事業規模を拡大し、明治36年（1903年）には日本絹綿紡績を買収して保土ヶ谷工場を設置しました。さらに、明治39年（1906年）9月には東京瓦斯紡績を合併し、社名を富士瓦斯紡績株式会社と変更するなど、積極的な拡大戦略を進めました。大正期には電気事業の兼営認可を受け、昭和2年（1927年）には富士電力株式会社を設立して電気事業を分社化しています。

昭和に入ると、昭和5年（1930年）には川崎工場で労働争議が発生し、「煙突男」として世間の注目を集めました。昭和10年（1935年）12月には、関東大震災で壊滅的な被害を受けた相模紡績を合併しています。戦時中の昭和17年（1942年）には、国の政策により電気事業を9配電会社に譲渡し、富士電力は解散。昭和18年（1943年）には帝国製糸の資産譲渡を受けましたが、戦後の昭和24年（1949年）2月には政令によりその資産を返還しています。

終戦直後の昭和20年（1945年）12月には、再び社名を富士紡績株式会社に戻しました。そして、昭和24年（1949年）5月には東京証券取引所および大阪証券取引所に株式を上場し、近代企業としての体制を固めました。

事業の多角化と組織再編

戦後、富士紡績は紡績業を基盤としつつ、新たな事業分野への展開も図りました。昭和25年（1950年）8月には柳井化学工業株式会社を設立し、化学工業分野に進出。昭和26年（1951年）には小坂井工場、昭和47年（1972年）には和歌山工場を新設するなど、生産拠点を拡充しました。昭和48年（1973年）には再び帝国製糸を買収するなど、関連事業を取り込んでいます。

アパレル分野への本格進出は昭和50年（1975年）12月の株式会社フジボウアパレル設立に始まり、翌昭和51年（1976年）4月にはアメリカのB.V.D.社とライセンス契約を締結しました。B.V.D.ブランド製品は、同社の代表的な製品として広く知られることになります。

その後、昭和52年（1977年）以降、壬生川工場、小坂井工場、和歌山工場などを分離してフジボウ愛媛、フジボウ小坂井、フジボウ和歌山といった子会社を設立するなど、組織体制を整備しました。平成7年（1995年）にはフジボウ電子を設立するなど、エレクトロニクス分野への展開も試みました。

持株会社体制への移行

企業の歴史における大きな転換点となったのは、平成17年（2005年）の組織再編です。この年9月、主要事業を会社分割してフジボウファイバー株式会社とフジボウ小坂井株式会社を設立するとともに、純粋持株会社体制へ移行しました。これに伴い、社名を現在の富士紡ホールディングス株式会社に改称しました。持株会社化以降もグループ内の再編は続き、事業分野ごとに子会社の統合や再編を進めています。近年では、アングル・ミユキ株式会社を完全子会社化し、その後のグループ内再編によりアパレル事業の効率化を図っています。

現在のグループ事業と広報活動

富士紡ホールディングスグループは、中核事業会社であるフジボウテキスタイルやフジボウアパレル、柳井化学工業などを通じて、繊維素材、衣料品（B.V.D.ブランドなど）、化学製品、電子材料など、幅広い製品やサービスを提供しています。特にフジボウアパレルが手がけるB.V.D.ブランド製品は、消費者にも馴染み深い存在です。

かつてはテレビやラジオ番組への提供、スポーツイベントへの協賛など、様々な広報活動を展開していました。テレビ番組「ナビっち」やラジオ番組「オールナイトニッポン」への協賛、スポーツイベント「フジサンケイクラシック」への協賛など、ブランド認知度向上に努めていました。

長い歴史の中で、紡績業から始まり、化学、エレクトロニクス、アパレルなどへと事業領域を拡大し、組織形態も変化させてきた富士紡ホールディングスは、現在も多様な事業を営む企業グループとして活動を続けています。

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