富山県立近代美術館

富山県立近代美術館の概要

富山県立近代美術館は、1981年7月に富山県富山市にオープンした公立美術館で、20世紀以降の美術作品を中心に展示していました。設立の背景には、富山市出身の美術評論家である瀧口修造の関与がありました。彼は名だたるアーティストたちとの交友関係を持っており、その影響を受けて美術館が構想されたものです。しかし、初代館長の要請を受け入れることなく1979年に他界し、その夢を見届けることはありませんでした。

美術館は、旧富山刑務所跡地にある城南公園内に位置し、隣接して富山市科学博物館があります。館内ではパブロ・ピカソ、マルク・シャガール、ロートレック、ルオー、シャガールの作品が揃い、特にシュルレアリスムに焦点を当てたコレクションが特徴的でした。また、13,000点以上のポスターやデザインチェアも展示され、多岐にわたるアートの魅力を表現していました。

美術館の主な成果として、1985年から開催された「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」が挙げられ、日本国内で唯一の国際的なポスターコンペティションとして注目を集めました。このトリエンナーレは毎回多くの応募作品があり、国際的なアートシーンでも一定の地位を持っています。

移転と閉館

しかし、開館からの年月とともに、老朽化や耐震基準が問題視されるようになりました。そこで富山県は新たに富岩運河環水公園西地区に「富山県美術館」としての新築移転を決定し、2016年12月28日に富山県立近代美術館はその役目を終えることになりました。

美術館の最後の企画展は「ありがとう近代美術館 PART2『MOVING! ミュージアムが「動く」』」で、多くの来館者から感謝の意を表されながら閉館を迎えました。移転準備のための閉館は、富山県民にとって寂しいニュースでしたが、新しい美術館に対する期待も高まりました。

主なコレクションと展示

美術館のコレクションは、絵画や版画を中心に多岐にわたり、ピカソの「闘牛場の入り口」やロートレックの「マンジの肖像」、シャガールの「山羊を抱く男」など、近代芸術の代表作品が揃っていました。また、彫刻作品も多数所蔵し、ルネ・マグリットやジョージ・シーガルなどの作品が展示されていました。

館内は、3層構造で、招聘されたアーティストの個展や企画展が定期的に開催されていました。特に、展覧会には地元作家の作品や、近年の現代アートも多く取り入れられており、地域文化の発展にも寄与していました。

未来への橋渡し

新たな「富山県美術館」へと生まれ変わる運びとなり、富山県のアートシーンは今後どう展開していくか、ますます注目が集まっています。新しい美術館では、これまで以上に多様なアート体験が提供され、地域とアートの結びつきがさらに深まることを期待されています。

富山県立近代美術館の歴史は、県民の育む文化の一部として心に残り続けることでしょう。これまでの足跡を辿りつつ、新たな美術館でのさらなるアートの発展が楽しみです。

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