富永次郎

富永次郎：多才な美術評論家の生涯

富永次郎（1909年4月23日 - 1969年7月14日）は、日本の美術評論家であり、その活動は多岐に渡りました。文学、哲学にも深い知識を持ち、評論だけでなく小説や児童向けの美術入門書も執筆しました。また、教育者としても成城大学で教鞭を執り、後進の育成に努めました。

生い立ちと文学への目覚め

東京本郷に生まれた富永次郎は、兄に詩人の富永太郎、弟に彫刻家の富永三郎を持つ芸術一家に育ちました。1925年、旧制成城第二中学校在学中に兄・太郎を亡くしたことが、彼の文学への関心を深めるきっかけとなりました。1927年には、兄の遺稿詩集の出版に携わります。旧制成城高等学校時代には、大岡昇平や古谷綱武といった文学仲間と出会い、1929年には同人雑誌『白痴群』の創刊に参加しました。この雑誌には、河上徹太郎が編集人として、また村井康男やその門下生、中原中也らが寄稿しており、当時の文学シーンにおいて重要な役割を果たしました。富永は京都帝国大学文学部美学科を卒業し、美術評論家としての基礎を築きました。

多彩な執筆活動

1940年、富永は小説『黄昏暦』を発表し、文筆家としての才能を示しました。その後は、美術書、子ども向けの美術案内書など、幅広いジャンルの著作を発表しました。彼の著作は、美術史の専門的な知識に基づきながらも、一般読者にも理解しやすいように工夫されており、多くの人々に美術の魅力を伝えました。主な著書には、ダ・ヴィンチやマネといった巨匠に関する研究書、ゴッホやミレーといった画家の伝記、日本の美術を紹介する書籍などがあります。また、児童向けの著作では、絵本や学習教材の執筆も手がけました。これらの活動を通して、富永は美術の普及と教育に貢献しました。

教育者としての側面

戦後は、成城大学で教授を務め、美術史や美術理論を教えました。学生たちに美術の楽しさや奥深さを伝え、多くの学生を美術の世界へと導きました。彼の講義は、単なる知識の伝達にとどまらず、学生たちの思考力や感性を刺激するものであったと伝えられています。

富永次郎の業績

富永次郎は、美術評論家としてだけでなく、小説家、教育者としても大きな足跡を残しました。彼の著作は、美術史の研究だけでなく、美術教育や文化普及にも大きな影響を与えています。また、同人雑誌『白痴群』の活動は、戦前の文学、芸術シーンを語る上で欠かせない要素となっています。彼の業績は、今日においても高く評価されており、その影響は多方面に及んでいます。

主な著書一覧（一部）

ダ・ヴィンチ (1932)
マネ (1939)
黄昏暦 (1940)
ゴッホ 炎の画家 (1952)
レオナルド・ダ・ヴィンチ 芸術と科学の先駆 (1953)
北斎 浮世絵の巨匠 (1954)
美術のたのしみ (1955)
ミケランジェロ (1959)
ダ・ビンチ 万能の天才 (1961)
雪舟 (1967)

富永次郎は、その多才な才能と幅広い活動を通して、日本の美術と文化の発展に大きく貢献しました。彼の作品と精神は、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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