富永太郎

富永太郎：夭折の詩人、その短い生涯と情熱

富永太郎（1901年5月4日 - 1925年11月12日）は、大正時代に活躍した詩人、画家、翻訳家です。わずか24歳という若さでこの世を去りましたが、その短い生涯の中で、文学や美術に対する深い情熱を燃やし続けました。

生い立ちと青春時代

1901年、富永太郎は東京に生まれました。父は鉄道省に勤務し、後に青梅鉄道の社長を務めた人物で、母は女学校の国語教師でした。幼少期から学問に親しみ、誠之小学校を経て東京府立第一中学校に進学。府立一中では、小林秀雄や正岡忠三郎といった、後に日本の文学界を担う人物たちと出会いました。特に、1916年に神戸一中から編入してきた河上徹太郎とは同級生となり、互いに影響を与え合いました。

1919年、府立一中を卒業後、第二高等学校理科乙類（理系ドイツ語クラス）に進学。当初は生物学を志望していましたが、ニーチェやショーペンハウアーといった哲学者の思想に触れるうちに、文学への関心を深めていきました。しかし、1921年に数学と化学で落第点を取って留年。科学への情熱を失い、授業を欠席してフランス語を学び、ボードレールの詩に熱中するようになります。

挫折と転向、そして出会い

二高在学中には、8歳年上の人妻との恋愛問題を起こし、中退。その後、第一高等学校仏法科を受験するも不合格となり、東京外国語学校仏語科に入学しますが、不眠症や頭痛に悩まされ、出席日数不足で留年。休学して川端龍子の画塾に通い、画家を目指すようになります。1923年11月からの上海への旅を経て、画家として立つことを決意し、本郷の菊坂絵画研究所で修業を積みました。

1924年6月には、京都帝国大学に在籍していた正岡忠三郎を訪ねて京都に滞在。この頃、立命館中学4年生だった中原中也と出会い、親交を深めます。

病魔との闘い、そして早すぎる死

1924年10月、喀血したことから病院で診察を受けた結果、肺結核と診断されます。闘病生活を送る傍ら、同年12月には同人誌『山繭』に詩を発表。1925年1月には、宮沢賢治の詩集『春と修羅』を読んで感銘を受け、正岡忠三郎に推薦しました。

しかし、病状は悪化の一途をたどり、1925年11月12日、わずか24歳という若さでこの世を去りました。臨終の際には、酸素吸入器のゴム管を「きたない」と言って自ら取り去ったと伝えられています。墓所は多磨霊園にあります。

死後

富永の死後、弟の富永次郎によって詩集が編纂され、その作品は世に知られるようになりました。また、作曲家の富永三郎も弟にあたります。

富永太郎の作品

富永太郎詩集 富永次郎、1927
富永太郎詩集 筑摩書房、1941
富永太郎詩集 創元社 創元選書、1949
定本 富永太郎詩集 中央公論社、1971
富永太郎詩畫集 求龍堂、1972
富永太郎詩集 思潮社 現代詩文庫、1975

関連人物

正岡忠三郎
秋山真之
中原中也
小林秀雄
* 長谷川泰子

富永太郎は、短い生涯の中で、文学、美術、音楽など、様々な分野に才能を発揮しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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