富田の清水

富田の清水：弘前市の歴史と文化を育む清流

青森県弘前市大字紙漉町に位置する富田の清水は、昭和60年（1985年）に環境省の名水百選に選ばれた、地域住民にとってかけがえのない湧水です。古くから「富田の清水（しつこ）」と呼ばれ、周辺地域に数多く存在した湧水のひとつとして親しまれてきました。

その歴史は古く、1686年（貞享3年）、弘前藩主・津軽信政が越前和紙の技術を持つ職人、熊谷吉兵衛を招いたことに始まります。熊谷吉兵衛によって紙漉き技術が伝えられ、富田の清水は和紙生産に欠かせない水源として利用されるようになりました。昭和初期頃まで、この地では清水を用いた和紙作りが盛んに行われていたと言われています。

和紙生産が衰退した後も、富田の清水は地域住民の生活用水として重要な役割を担い続けました。6つの水槽が整備され、それぞれの用途が決められていました。1番目と2番目の水槽は飲用水として、3番目は食料の洗浄や洗面に、4番目はかつては紙漉きの材料洗い場として、現在は野菜や漬物の冷却などに使用されました。5番目と6番目の水槽は洗濯や足洗いなどに利用されていました。また、富田の清水から100メートルほど離れた場所には、「御膳水」と呼ばれる湧出口があり、かつてはここからもう水が湧き出ていたそうです。

このように、富田の清水は長い間、地域住民の生活に密着し、大切に管理されてきました。その清らかで豊かな水は、人々の暮らしに潤いと安らぎを与え続けています。身近で清涼な水、そして歴史と文化を育んできた水として、名水百選に選定されたことは、その価値と重要性を示すものです。

1995年7月7日には、所有者であった紙漉町清水共有会から弘前市に寄贈され、現在も市民に愛される貴重な存在となっています。

交通アクセス

富田の清水へは、弘南鉄道大鰐線中央弘前駅から青森県道127号石川土手町線を利用するとアクセスできます。具体的なルートについては、弘前市の観光案内所やウェブサイトなどで確認することをお勧めします。

富田の清水と地域

富田の清水は、単なる湧水ではなく、弘前市の歴史と文化を象徴する存在です。和紙作りの歴史、地域住民の生活、そして名水百選に選ばれたという事実、これらの要素が一体となり、富田の清水という存在に深みと魅力を与えています。これからも、この貴重な資源が大切に保護され、未来へと受け継がれていくことを願っています。

関連情報

環境省：名水百選
弘前市：弘前の名水
* 青森県：青森県名水百選

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