寒極

寒極とは

寒極（かんきょく、英語: Pole of Cold）とは、地球上で最も低い気温が観測される地点のことです。北半球と南半球それぞれに存在し、その極端な寒さは、地球の気候システムにおける重要な要素の一つです。

寒極の特徴

寒極は、一般的に大陸の内陸部に位置しています。これは、比熱の小ささが影響しており、特に冬季には気温が大幅に低下しやすいという特徴があります。比熱とは、物質の温度を1度上昇させるのに必要なエネルギーのことで、比熱が小さい物質ほど温度変化が大きくなります。

海と比較して、陸地は比熱が小さいため、冬季には急速に冷却されます。特に、大陸の内陸部では、海からの熱供給が少なく、冷たい空気が滞留しやすい地形であることも、気温が極端に低下する要因となります。

北半球の寒極

北半球の寒極として知られる主な場所は、以下の通りです。

オイミャコン（ロシア）：1926年1月26日に-71.2℃（ただし、測定法に議論あり）、1933年2月6日に-67.7℃が観測されました。オイミャコンは、シベリア東部に位置し、冬の寒さが非常に厳しい地域です。
ベルホヤンスク（ロシア）：1885年1月15日、1892年2月5日、2月7日に-67.8℃が観測されています。ベルホヤンスクも、シベリアに位置し、オイミャコンと並び、北半球における寒極として知られています。

これらの地点では、冬季には極めて厳しい寒さとなり、人間が生活するには過酷な環境となります。

南半球の寒極

南半球の寒極は、南極大陸に存在します。

ボストーク基地（南極）：旧ソビエト連邦が設立したボストーク基地では、1983年7月21日に-89.2℃という、地球上で観測された最も低い気温が記録されました。南極大陸は、標高が高く、内陸部に位置することから、極端な低温環境が形成されています。南極大陸は、ほぼ全域が氷で覆われており、反射率が高いため、太陽光エネルギーを吸収しにくく、気温が下がりやすい環境です。

寒極の重要性

寒極は、地球の気候システムにおける重要な指標の一つです。これらの地点の気温変動を観測することで、地球全体の気候変動を把握する上で重要な情報が得られます。

また、寒極の存在は、地球上の生物多様性にも影響を与えています。寒冷な環境に適応した独自の生態系が形成されており、その保全も重要な課題となっています。

その他の極低温地点

地球以外にも、太陽系には非常に低い温度が観測されている場所があります。

月のエルミートクレーター：月の北極近くに位置するエルミートクレーターは、常に影になっている永久影クレーターであり、2009年の観測で-247℃という太陽系で最も低い温度を記録しました。
ブーメラン星雲：宇宙空間に存在するブーメラン星雲は、自然な状態の宇宙空間の中で最も低温な天体であり、-272℃という極めて低い温度であることが観測されています。

参考資料

仁科淳司『やさしい気候学』（第3版）古今書院、2014年。ISBN 978-4-7722-8506-3。

関連事項

熱赤道
世界の最低気温記録

外部リンク

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