寛保津波

寛保津波について

寛保津波（かんぽうつなみ）は、1741年8月29日、つまり寛保元年7月19日の未明に発生した、強大な大津波です。この津波は、日本海の北海道・渡島半島の西方約50キロメートルに位置する渡島大島での火山の噴火に起因しています。この噴火による山体崩壊が引き金となり、津波が発生したと考えられています。

津波の発生と影響

この津波は、北海道の道南エリアから島根県の海岸にまで広がり、さらには朝鮮半島の江原道にも到達しました。津波の高さは、北海道の乙部で10-15メートル、松前と熊石の間で6-12メートル、青森県の津軽で2-7メートル、新潟県の佐渡島で2-5メートル、石川県の能登で3-4メートル、島根県の江津で1-2メートルとされています。東京大学地震研究所の羽鳥徳太郎氏による推定によれば、この津波のマグニチュードは3.5、またはMt8.4に達し、日本海側で発生した津波の中でも最大級の規模とされています。

特に松前藩においては、津波による死者が2083人に及ぶなど、甚大な被害がもたらされました。加えて、家屋流失や倒壊も多発し、証拠として弘前藩庁日記や松前年々記に記録されています。特に松前の江良地区では450人が犠牲となり、周辺地域の被害も深刻でした。弘前藩においても、死者が33人に達し、多くの住宅が倒壊しました。

津波の原因

寛保津波の原因としては、数日前からの渡島大島の噴火が挙げられます。また、山体崩壊の痕跡が見られたことや、記録には地震の情報が含まれていないことから、噴火による山体崩壊が津波の引き金となったとする説が主流でした。しかし、津波の規模が予想以上であったことから、地震・津波モデルを用いたシミュレーションでは、近海の低周波地震が津波を引き起こした可能性も指摘されています。

その後の潜水艇による海底調査により、実際の山体崩壊が海面下にまで及んでいたことが明らかになり、津波堆積物の発見や歴史的記録と照らし合わせることで、噴火による山体崩壊が主要な原因であるという説が呼び戻されました。この件に関して、千葉大学の津久井雅志教授は、山体崩壊が津波の発生に寄与した可能性が極めて高いと指摘しています。

関連遺物

寛保津波に関連する遺物としては、「寛保津波の碑」があります。これは津波の犠牲者を悼むために設けられたもので、正覚院や法華寺、泉龍院、光明寺、無量寺が北海道指定の有形文化財に指定されています。また、松前広長によって描かれた渡島大島の噴火や大津波の被害を示す絵図も収められていることから、これらの遺物は重要な文化財として位置づけられています。

このようにして、寛保津波は日本史において重大な出来事の一つであり、その影響や関連事項は今もなお多くの人々にとって重要な研究対象となっています。

もう一度検索