寝たきり老人ゼロ作戦

寝たきり老人ゼロ作戦とは

寝たきり老人ゼロ作戦は、1989年に当時の厚生省（現在の厚生労働省）が策定した「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」（通称：ゴールドプラン）の中で打ち出された重要な施策の一つです。この作戦は、日本における寝たきり老人の数が、欧米先進諸国と比較して非常に多いという現状を背景に、寝たきり状態を予防し、寝たきり老人の数を減少させることを目的としています。

作戦の背景

当時の日本では、高齢化が急速に進む中で、寝たきり老人の増加が社会的な課題となっていました。寝たきり状態は、高齢者本人の生活の質を著しく低下させるだけでなく、介護を行う家族の負担も増大させ、医療費や介護費用の増大にもつながるため、社会全体で解決すべき問題でした。このため、厚生省は、寝たきり状態を予防し、高齢者が可能な限り自立した生活を送れるよう支援する政策を打ち出しました。

政策の主な内容

寝たきり老人ゼロ作戦では、高齢者の自立を支援するために、以下の様な具体的な施策が展開されました。

脳血管疾患のリハビリテーションの推進: 脳卒中などの脳血管疾患は、寝たきりの原因となることが多いため、発症後のリハビリテーションを強化し、早期の機能回復を目指しました。
在宅医療サービスの充実: 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、在宅医療や訪問介護サービスを拡充しました。
人材の確保: 保健師や看護師などの専門職の育成と確保を進め、高齢者の健康管理や介護を支える体制を整備しました。
予防医療の推進: 高齢者の健康状態を定期的にチェックし、生活習慣病などの早期発見と予防を促進しました。
介護予防の推進: 運動や食事指導などを通じて、高齢者が健康な状態を維持し、寝たきりになるリスクを低減させるための取り組みを進めました。

新寝たきり老人ゼロ作戦への発展

1994年には、新たな高齢者保健福祉計画である「新ゴールドプラン」が策定され、これに伴い、寝たきり老人ゼロ作戦も「新寝たきり老人ゼロ作戦」へと名称を改め、内容もさらに拡充されました。新ゴールドプランでは、高齢者の介護予防と自立支援をより重視し、介護保険制度の導入に向けた準備も進められました。

作戦の成果と課題

寝たきり老人ゼロ作戦は、日本の高齢者福祉政策における重要な転換点となり、高齢者の健康寿命を延ばす上で大きな貢献をしたと言えます。しかし、高齢化は依然として進行しており、寝たきりや認知症などの問題は未だ解決すべき課題として残されています。今後は、より効果的な介護予防策や地域包括ケアシステムの構築などを進め、高齢者が地域社会の中で安心して生活できる社会づくりを目指していく必要があります。

関連情報

ゴールドプラン: 厚生省が策定した高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略の愛称です。
新ゴールドプラン: 1994年に策定された新たな高齢者保健福祉計画です。
国立社会保障・人口問題研究所: 寝たきりゼロに関する情報を提供しています。


この作戦は、高齢化社会における重要な課題に取り組み、高齢者が可能な限り自立した生活を送れるようにするための政策です。今後のさらなる発展が期待されます。

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