審査官 (特許庁)

特許庁の審査官とは

特許庁における審査官は、特許出願、意匠登録出願、商標登録出願などの知的財産権に関する出願書類を審査する専門職員です。これらの審査は、各国においても同様の役割を担う審査官によって行われていますが、本稿では特に日本の審査官について詳しく解説します。

概要

日本の特許法第47条第1項では、「特許庁長官は、審査官に特許出願を審査させなければならない」と規定されており、特許出願の審査は審査官のみが行うことができると定められています。意匠法第16条、商標法第14条も同様に、それぞれの出願審査を審査官が行うことを義務付けています。

特許審査官は、特許出願の審査だけでなく、実用新案技術評価書の作成（実用新案法第12条）や、国際出願に関する国際調査報告・国際予備審査報告の作成（特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律第8条）も担当します。これらの業務は、技術革新と知的財産権の保護において不可欠な役割を果たしています。

資格

審査官の資格は、特許法第47条第2項（意匠法、商標法で準用）に基づき政令で定められています。具体的には、特許法施行令第4条において、特定の職務級にあり、所定の研修課程を修了した上で、以下のいずれかの条件を満たす者が資格を有すると規定されています。

1. 4年以上特許庁で審査事務に従事した者
2. 産業行政等の事務に通算5年以上従事し、うち3年以上特許庁で審査事務に従事した者
3. 産業行政等の事務に通算6年以上従事し、うち2年以上特許庁で審査事務に従事した者
4. 産業行政等の事務に通算8年以上従事し、上記と同等以上の学識経験を有すると認められる者

これらの条件は、審査官が高度な専門知識と実務経験を有していることを保証するために設けられています。

任用

特許審査官は、通常、国家公務員採用総合職試験（技術系）の合格者から採用されます。意匠審査官は、特許庁が独自に行う意匠審査職員採用試験（国家公務員採用総合職試験（大卒程度試験）相当）の合格者から、商標審査官は、国家公務員採用一般職試験（行政）の合格者から採用されます。

採用後、3ヶ月間の研修を修了すると、まず審査官補として任用されます。その後、審査の事務経験を積みながら所定の研修を受け、通常は入庁から4年で審査官に昇任します。

審査官および審査官補は、経済産業省組織規則第325条第1項により、総務部、審査業務部、特許審査第一部、特許審査第二部、特許審査第三部、特許審査第四部に配置されます。

また、特許庁で審査官・審判官として7年以上勤務した者は、弁理士の資格を得ることができます（弁理士法第7条）。

任期付審査官

特許庁では、特許審査の迅速化を図るため、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律に基づき、任期付職員として特許審査官および特許審査官補を採用することがあります。

任期付職員（特許審査官）

応募資格は、理工系の大学を卒業し、企業、大学、研究機関などで4年以上の実務経験を持つ者です。また、特許法施行令第4条に規定される審査官の資格を満たし、特許・実用新案登録の出願審査業務経験も必要です。任期は5年を超えない範囲で、専門性と適性を考慮して再任も可能です。再任されれば弁理士資格を得る道が開かれます。

任期付職員（特許審査官補）

応募資格は、理工系の大学を卒業し、企業、大学、研究機関などで4年以上の実務経験を持つ者ですが、特許法施行令第4条に規定される審査官の資格を有しない者が対象です。任期付職員として採用された後、審査官を補助しながら2年間の実務経験を積み、所定の研修を修了すると、3年目に審査官に昇任します。任期は5年を超えない範囲で、専門性と適性を考慮して再任が可能です。再任されれば弁理士資格を得ることができます。

著名な審査官

特許庁の審査官の中には、その後のキャリアで著名な人物も多く存在します。

日本

植村昭三 - 元世界知的所有権機関事務局次長
高木善幸 - 世界知的所有権機関事務局長補
本野英吉郎 - 元読売新聞社長
山口武彦 - アズビル（旧・山武）・日本酸素ホールディングス（旧・日本酸素）・日本精工の創業者
山田秀三 - アイヌ語地名研究家、北海道曹達社長
八木橋正雄 - ギリシア語研究者、言語学者
清水啓助 - 慶應義塾大学商学部教授・知的資産センター所長、元特許技監
石井正 - 大阪工業大学名誉教授・元知的財産学部長、元特許技監
高倉成男 - 明治大学法科大学院客員教授
熊谷健一 - 法学者、明治大学法科大学院教授
佐伯とも子 - 東京工業大学名誉教授
鈴木公明 - 東京理科大学専門職大学院教授
服部健一 - 法律家、米国特許弁護士、日本弁理士
山下弘綱 - 法律家、米国特許弁護士

日本以外

アルベルト・アインシュタイン - 物理学者、スイス特許庁に勤務
クット・アッテルベリ - 作曲家、スウェーデン特許庁に勤務

まとめ

特許庁の審査官は、知的財産権制度を支える重要な役割を担っています。厳格な資格要件と専門知識を持つ審査官によって、公正かつ適正な審査が行われることで、技術革新と産業発展が促進されています。また、任期付審査官制度は、審査の迅速化と質の向上に貢献しています。

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