寺田屋遭難

寺田屋遭難の概要

寺田屋遭難（てらだやそうなん）は、1866年3月9日、京都の寺田屋で起こった坂本龍馬とその護衛役の三吉慎蔵が襲撃された事件です。この事件は、後に寺田屋事件とも呼ばれます。当時、坂本龍馬は幕末の混乱期において重要な役割を果たしていただけに、その襲撃に対する反響は大きなものでした。

事件の経過

事件は深夜の2時頃、龍馬と三吉が宿泊していた寺田屋が幕府の伏見奉行の捕り方によって囲まれるところから始まりました。いち早く危険を察知したお龍は、風呂から上がり、なんと裸のまま裏階段を駆け上がり、龍馬に危機を知らせました。捕り方は「肥後守からの上意」として強硬に押しかけてきましたが、龍馬らは自らが薩摩藩士であると嘘をつきました。しかし、その主張は簡単に看破されました。

龍馬は高杉晋作から贈られた拳銃を取り出し、三吉は手槍を用いて抵抗を試みます。戦闘は激化し、捕り方2名を射殺し、数名を殺傷することに成功しましたが、龍馬は捕り方の刀をかわす際に両親指を負傷し、拳銃を扱えなくなってしまいました。

その間にも三吉は必死になって槍で戦い続け、一方でお龍は裏木戸の漬物槽を払いのけ、辛くも家から脱出し、近くの材木屋へ隠れました。三吉は責任を感じ、切腹しようとしましたが、龍馬は止め、伏見の薩摩藩邸に援助を求めに行くよう促しました。

薩摩藩邸にいた留守居役の大山彦八が藩士3名を引き連れて川船を出し、龍馬を救出に向かいました。こうして龍馬は何とか生還することができ、すぐに西郷隆盛のもとに報告がなされ、吉井幸輔が早馬で事情を調査し、軍医を派遣して治療にあたると同時に藩邸に警護を配置しました。

次の日、薩摩藩邸は龍馬の引き渡し要求を受けるもこれを拒否します。その後、龍馬は伏見の藩邸から京の藩邸（二本松）へ移るものの再び伏見に戻り、大阪から船で鹿児島へ逃れることになります。その後しばらくは西郷の斡旋により薩摩領内での隠れ住まいを余儀なくされました。

新撰組との関わり

寺田屋遭難事件には新撰組が関わったとの説もあったが、誤解に基づくものでした。伏見奉行の林忠交が「肥後守」であったため、官位が同じ松平容保との関連から新撰組の関与が考えられたようです。しかし、実際には両名は度々新撰組の検問を問題なく通過しており、特に嫌疑を受けた形跡はありませんでした。

事件の背後にあったのは「薩摩藩士を装った不逞浪人が寺田屋にいる」との情報であり、これが伏見奉行の動機であったとされています。

事件の影響

寺田屋遭難の後、元京都見廻組の今井信郎は捕り方の襲撃動機について、龍馬がその時に殺人・逃亡犯であったことを理由に挙げました。彼の証言には異論が出るも、明治政府は今井を近江屋事件との関与で禁固刑にする判断を下しました。これにより、お龍は龍馬の命を救ったものの、その騒動が後の悲劇に繋がったとも考えられます。

このように、寺田屋遭難は単なる襲撃事件ではなく、幕末の動乱期における人物像やその後の歴史にも深く影響を与えた出来事であったのです。

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