三吉慎蔵

三吉慎蔵：坂本龍馬を救った長州藩士

三吉慎蔵は、幕末期に活躍した長州藩士です。現在の広島県三次市にルーツを持つ名家、三吉家の出身で、幼少期より武芸の鍛錬に励みました。剣術では今枝流、槍術では宝蔵院流を修め、高い技量を身につけました。

慎蔵は、長府藩の藩校である敬業館や長州藩の明倫館で学びを深め、藩主・毛利元周の近習扈従役として江戸にも随行するなど、早くから藩政の中枢に関わっていました。

慎蔵の名を一躍有名にしたのは、慶応2年（1866年）に発生した寺田屋事件です。この事件で、彼は坂本龍馬と深く関わりました。龍馬と親交のあった慎蔵は、長府藩から京都の情勢を探る任務を与えられ、龍馬と共に下関から伏見の寺田屋を訪れていました。

薩長同盟締結直後、龍馬らと会談を終えた夜半、伏見奉行所の捕り方に寺田屋が襲撃されました。この時、慎蔵は槍を手に応戦し、包囲網を突破して寺田屋から脱出。負傷した龍馬を材木小屋に匿い、単身薩摩藩邸に駆け込み、救援を要請するという活躍を見せました。龍馬の命を救ったこの行動は、歴史に大きな足跡を残しています。この出来事の詳細は、慎蔵自身の『三吉慎蔵日記抄録』に記録され、司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』にも詳しく描かれています。

寺田屋事件後、慎蔵は長州藩主・毛利敬親から刀を下賜され、長府藩主からも加増を受けました。その後も、第二次長州征討（四境戦争）では長府藩の報國隊軍監として、高杉晋作率いる奇兵隊と共に幕府軍と戦い、勝利に貢献しました。

明治維新後、慎蔵は豊浦藩（長府藩）権大参事となり、廃藩置県後は宮内省御用掛として北白川宮家の家令を務めました。龍馬の妻、お龍とその妹・君枝を匿い保護したのも慎蔵です。龍馬は亡くなる直前、慎蔵に彼女たちの面倒を見るように遺言を残していました。彼はその遺志を継ぎ、3ヶ月間自宅で彼女たちを保護した後、お龍を高知の坂本家に送り届けました。

晩年は故郷の長府で静かに暮らし、明治34年（1901年）、71歳で生涯を終えました。

三吉慎蔵は、剣の腕、知略、そして義侠心に富んだ人物でした。坂本龍馬との交流を通して、激動の幕末を生き抜き、維新後も重要な役割を果たした、まさに時代を駆け抜けた人物と言えるでしょう。数々の歴史ドラマや小説にも登場し、その生涯は多くの人々に知られています。彼の人生は、幕末の動乱期を生き抜いた武士の生き様を象徴する物語として、今もなお人々の心に深く刻まれています。彼の功績は、単なる武勇だけでなく、人情味あふれる行動にも表れており、歴史上重要な人物として記憶されています。その生涯は、時代劇や歴史小説など、様々な形で後世に語り継がれています。

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