寺田政明

寺田政明：日本のシュルレアリスムを代表する画家

寺田政明（1912年1月3日-1989年7月12日）は、20世紀日本の洋画界を代表する画家のひとりです。福岡県八幡市（現在の北九州市八幡東区）に生まれ、俳優の寺田農氏を息子に持つことでも知られています。

若き日の才能と「池袋モンパルナス」

1919年、幼少期の事故で足に障害を負いますが、その入院中に絵画への興味を発見。その後、九州画学院を経て上京し、小林萬吾の同舟舎絵画研究所で研鑽を積みます。代々木八幡、谷中、長崎仲町と住まいを移しながら、精力的に制作活動を行い、多くの芸術家たちと交流を深めました。

特に1920～40年代にかけては、池袋周辺に集まった芸術家たちの集まり「池袋モンパルナス」の中心人物として活躍しました。このアトリエ村は、多くの若手芸術家たちが集い、互いに刺激し合いながら創作活動を行う場として知られており、寺田政明はその中心人物の一人として重要な役割を果たしました。小熊秀雄らとの交流も深く、その影響は作品にも見て取れます。

シュルレアリスムと多様な画風

寺田政明は、日本のシュルレアリスム絵画を代表する画家として高く評価されています。シュルレアリスム特有の、現実離れした幻想的な世界観や、夢や無意識の世界を表現した作品を数多く残しました。しかし、彼の画風はシュルレアリスムに留まらず、多様な表現方法に挑戦し続けています。風景画、人物画、抽象画など、幅広いジャンルで独自の表現を追求し、常に新たな境地を開拓し続けました。

旺盛な創作活動と評価

独立展への入選を皮切りに、数々の展覧会に出品し、高い評価を獲得します。NOVA展への出品や初個展開催、独立美術協会賞受賞など、着実にキャリアを重ねて行きました。また、創紀美術協会、美術文化協会、自由美術協会、主体美術協会など、多くの美術団体にも所属し、積極的に活動に参加しました。戦後は新聞や週刊誌の挿絵なども手掛け、その才能は多方面に渡り発揮されました。

海外への取材旅行も精力的に行い、フランス、スペイン、ギリシャ、イタリアなどを訪れ、その経験を作品に反映させています。晩年は、北九州市立美術館や板橋区立美術館などで回顧展が開催され、その作品は高い評価を受けました。現在も多くの作品が美術館に所蔵され、後世にその芸術は受け継がれています。

人となり

息子の寺田農氏によると、寺田政明は「ぼうふら一匹も殺してはいけない」という慈悲深さを持ち合わせた人物だったといいます。その穏やかで優しい人柄は、周囲の人々から慕われていたことでしょう。彼の作品からは、そんな人となりも感じ取ることができます。

まとめ

寺田政明は、日本のシュルレアリスム絵画を代表する画家としてだけでなく、多様な表現方法に挑戦し続けた、独自の芸術性を確立した画家でした。彼の作品は、現在もなお多くの人々を魅了し続けており、日本の美術史に大きな足跡を残しています。数々の展覧会や画集によって、その業績は広く知られており、後世への影響も計り知れません。

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