寺田祐之

寺田祐之は、1851年1月27日に信濃国（現在の長野県）に生まれ、日本の内務官僚として明治時代に活躍しました。彼は、鳥取、岡山、宮城、広島の各県知事を歴任し、それぞれの地域で重要な政策を推進しました。

初期の経歴と警察官僚時代

寺田は、旧飯山藩士の家に生まれ、後に寺田勘兵衛の養子となりました。1871年には飯山県の学監を務め、その後、司法省の警視として警察官僚の道を歩み始めます。警察が内務省に移管されると、兵庫、山梨、香川、広島の各県で警部長を歴任し、新潟県では内務部長を務めるなど、地方行政の実務経験を積みました。

鳥取県知事としての功績

1901年、寺田は鳥取県知事に就任します。彼は、県内を視察し、教育施設の整備、森林の増殖、県営模範林の造成など、県政の発展に貢献する事業を積極的に推進しました。

岡山県知事、宮城県知事としての活動

1906年には岡山県知事に転任し、その後1908年には宮城県知事に就任します。宮城県知事時代には、松島湾周辺地域を一大観光地とする「松島公園」構想を打ち出し、そのシンボルとして、東北地方初のリゾートホテルである松島パークホテルを建設しました。このホテルは、地域の観光振興に大きく貢献しました。

広島県知事としての偉業

1913年、寺田は広島県知事に就任します。日清戦争後の産業振興を目的として、県産品の販路拡大のために物産陳列館の建設を計画しました。彼は、宮城県知事時代に松島パークホテルの設計を依頼した建築家ヤン・レツルに同館の設計を委託し、1915年に広島県物産陳列館（現在の原爆ドーム）が完成しました。この建物は、後に世界遺産に登録され、広島の歴史を語る上で重要な存在となっています。また、県内産業の振興策として、広島県物産共進会を開催し、広島県植民協会を発足させるなど、産業発展にも尽力しました。

晩年と死

1916年に広島県知事を退任し、その後、休職しましたが、1917年3月6日に脳溢血を発症、肺炎を併発して同年3月14日に東京で死去しました。彼の功績を讃え、葬儀は青山斎場で行われ、青山霊園に埋葬されました。

栄典と受章

寺田祐之は、その功績が認められ、従七位から始まり、最終的には正三位勲二等に叙されました。また、勲五等双光旭日章、勲四等瑞宝章、旭日中綬章、勲二等瑞宝章、旭日重光章など、数々の勲章を受章しました。

寺田祐之は、地方行政官として、その卓越した能力と先見の明によって、各県において重要な政策を推進し、日本の近代化に大きく貢献しました。特に広島県物産陳列館の建設は、彼の功績の中でも特筆すべきものであり、現在もその遺産は大切にされています。

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