寺越外雄

寺越外雄とその背景

寺越外雄（てらこし そとお、1939年2月7日 - 1994年9月5日）は、日本の漁師であり、北朝鮮による拉致事件の犠牲者とされる人物です。彼は正式に政府に認定された拉致被害者ではないものの、民間団体の「救う会」では拉致被害者として位置づけられています。外雄は北朝鮮では金 哲浩（キム・チョルホ）として知られ、彼の失踪事件は「寺越事件」として知られています。これは1963年に彼が漁に出た際に行方不明となり、後に北朝鮮で生存していることが確認されるという非凡な経緯を持つものです。

人物・略歴

外雄は石川県羽咋郡志賀町で寺越嘉太郎の四男として生まれ、彼の家族には11人の子供がいました。外雄はその中で9番目の子どもでした。1963年5月11日、彼は兄の昭二と甥の武志と共に小型漁船「清丸」でのメバル漁に出港しました。この日は彼らが漁に出たまま行方不明になるという悲劇が始まります。

失踪と捜索

「清丸」は高浜港を出港し、漁を行っている最中に姿を消しました。事故やエンジントラブルの兆候は見当たらず、ただ漁師たちだけが忽然と姿を消した状態で船が発見されました。6日過ぎても彼らの遺体は見つからず、最終的に家族は遭難死として葬儀を執り行いました。

24年ぶりの手紙

1987年、外雄から24年ぶりに届いた手紙は、家族にとって衝撃的なものでした。手紙には、失踪後に北朝鮮で自ら家庭を持ち、2人の子供がいることが記されていました。外雄の兄弟は、この手紙に対して外雄の真偽を確認するための質問を送りました。外雄からの返信で、彼の生存が確認されたのです。

北朝鮮での生活

外雄は北朝鮮で工作機械工場に勤務しながら、武志と共に在日朝鮮人の身分を偽って生活していました。外雄は1970年に韓福生と結婚し、二人の子供をもうけました。しかし、彼からの手紙にはしばしば金品を求める内容が含まれてもいました。家族は北朝鮮に何度も足を運び、外雄や武志と面会を重ねましたが、その際は常に監視が付きました。

死亡とその後の影響

1994年、寺越外雄は平安北道で亡くなりました。彼の兄は外雄の死亡認定を取り消すよう求め、2010年に正式に彼の戸籍が回復されました。事件の背後には、北朝鮮による拉致が疑われる状況が広がっていました。日本政府はこの事件が拉致事件の可能性があると認識し、事務的な調査が行われました。

北朝鮮による拉致疑惑

北朝鮮当局は外雄らが自ら北朝鮮に移り住むことを選んだと公表していますが、日本政府や関係団体の見解は異なります。事件の詳細な解析を支持する証言や物証が多くあり、事件は依然として未解決なままです。外雄の失踪は、北朝鮮による拉致問題における重要な事例のひとつであり、家族の苦悩と国家の問題を浮き彫りにしています。

このように、寺越外雄の行方不明事件は日本と北朝鮮との緊張関係や、拉致の背後にある複雑な事情を考察する材料となっています。

もう一度検索