寺部城

寺部城：三河地方の戦国を彩る城と、その後の変遷

愛知県豊田市寺部町に位置していた寺部城は、中世から近世にかけて、三河地方の歴史において重要な役割を担った平城です。2008年には豊田市指定史跡に指定され、その歴史的価値が認められています。

建立から織田氏傘下へ

寺部城は、15世紀中頃、文明年間（1469～1487年）に鈴木重時によって築かれました。鈴木氏は寺部城を拠点に勢力を拡大し、周辺地域を支配下に置いていました。しかし、同地域へ勢力を伸ばそうとしていた松平氏と対立、激しい争いを繰り広げます。天文年間（1533年頃）には、鈴木重教が松平清康と戦いを繰り広げるなど、両者の対立は激しさを増していきました。その後、今川義元の勢力下に入りますが、織田信長の台頭によって織田氏へ寝返ったため、今川氏から攻撃を受けるなど、複雑な政治情勢の中を生き抜いていきます。永禄年間（1558～1566年）には、鈴木重辰が松平氏と幾度となく戦闘を行い、激しい攻防が繰り広げられました。最終的に、永禄9年（1566年）には織田信長の重臣である佐久間信盛の攻撃を受け落城。寺部鈴木氏は松平氏の家臣となりました。

渡辺氏と寺部陣屋

その後、慶長15年（1618年）、尾張徳川家の家老であった渡辺守綱が寺部1万4千石を領し、寺部城跡に寺部陣屋を築きました。以降、渡辺氏が明治時代まで代々この地を治めることとなります。ちなみに、和泉国伯太藩の渡辺家は、この家の分家にあたります。

現在の寺部城址

現在、寺部城址は「寺部城址の森公園」として整備され、地域住民の憩いの場となっています。公園内には、陣屋門が移築・保存されており、当時の面影を偲ぶことができます。また、寺部陣屋の書院であった「又日亭」は、豊田市内の七州城（挙母城）敷地内に移設・復元され、一般公開されています。

まとめ

寺部城は、中世から近世にかけて、数々の戦乱を経験した城です。鈴木氏、松平氏、織田氏、そして渡辺氏と、様々な勢力がこの地を舞台に歴史を刻みました。現在では公園として整備され、歴史を学ぶ場として、そして地域住民の憩いの場として活用されています。城址に残る遺構や移築された建物は、当時の歴史を今に伝えており、訪れる人々に当時の情景を想像させる貴重な存在となっています。 城の遺構や資料を通して、激動の戦国時代、そして近世の情勢を垣間見ることができるでしょう。豊田市を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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