七州城

七州城（挙母城）：七つの国を見下ろす城塞都市の跡

愛知県豊田市小坂本町付近に存在した七州城は、正式名称を挙母城という歴史深い城郭です。1782年（天明2年）に築城され、挙母藩の政治の中枢として機能していました。その名の由来は、城が位置する童子山という高さ65メートルほどの丘から、三河国、尾張国、美濃国、信濃国、伊賀国、伊勢国、近江国の七つの国を見渡すことができたことにあります。

挙母城の歴史：金谷城から桜城を経て七州城へ

挙母における城の歴史は古く、鎌倉時代1309年には中條景長によって金谷城が築城されました。しかし、戦国時代を経て今川氏、織田氏の支配下に入り、江戸時代初期の1604年には三宅康貞が1万石で入封します。老朽化した金谷城に代わり、康貞は金谷城から約1キロメートル北の位置に新たな陣屋を築きました。この陣屋には多くの桜が植えられたことから、人々はこれを「桜城」と呼んでいました。

その後、寛延2年（1749年）に内藤氏が桜城の改修に乗り出しましたが、矢作川の氾濫による被害が相次ぎました。このため、より安全な高台への移転が決定され、七つの国を望む童子山に新たな城が築かれたのです。これが、現在の七州城（挙母城）です。

遺構と現在の姿：歴史を伝える石垣と移築された建物

明治時代以降、七州城の敷地は学校として利用され、豊田市立童子山小学校や愛知県立豊田東高等学校が置かれていました。現在は、豊田市美術館、豊田市博物館（郷土資料館と近代の産業とくらし発見館を統合、2024年4月26日開館）の敷地の一部と、城跡公園として整備されています。

現在も、豊田市美術館の敷地内には櫓台の石垣が残っており、1977年には隅櫓が復元されています。この隅櫓に隣接する書院「又日亭」は、かつて寺部城にあった書院で、明治時代に竜寿院に移築された後、七州城隅櫓の再建に合わせて現在の場所に移築されました。さらに、挙母祭りの山車蔵には、城の建物の解体部材を転用したものが存在し、豊田市内の個人宅にも城の建材を移築したと伝えられる建物が現存しています。これらの遺構は、七州城の歴史を今に伝える貴重な証となっています。

七州城と周辺環境：歴史と文化が融合する空間

七州城跡は、単なる歴史遺構ではなく、豊田市美術館や豊田市博物館といった文化施設と一体となって、歴史と文化を体感できる空間となっています。城跡公園として整備された敷地では、静かな散策を楽しむことができ、周辺には豊田市の歴史や文化を学ぶことができる施設が充実しています。七州城を訪れることで、豊田市の歴史と自然の豊かさを実感することができるでしょう。 七州城は、歴史の重みと現代の文化が融合した、貴重な場所と言えるでしょう。

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