松平清康

松平清康：西三河を制覇した若き武将

松平清康（まつだいら きよやす）は、戦国時代の武将で、安祥松平家の3代目当主です。徳川家康の祖父としても知られています。清康は、武力によって三河を掌握し、西三河を支配下に置きました。

生涯

若き日の台頭

永正8年（1511年）、松平信忠の嫡男として生まれた清康は、幼名を竹千代と名乗りました。大永3年（1523年）、祖父や一門衆によって家督を継承し、三河吉良氏の吉良持清から偏諱を受け、清孝（きよたか）と名乗りました。

三河統一への道

清康は、大永5年（1525年）に足助城の鈴木重政を降伏させ、大永6年（1526年）には岡崎松平家の山中城を攻撃して西郷信貞を屈服させました。これらの戦いを通じて、清康は武力による支配を確立していきました。

しかし、深溝松平家に伝わる奉加帳の写しには、清康が一時的に安城松平家から離れて山中城で自立していた可能性が示唆されています。このことから、清康が岡崎松平家を継ぎ、その後安城松平家に復帰したという説も提唱されています。

岡崎城の築城と支配体制の確立

清康は、旧岡崎城を破棄し、新たに龍頭山に岡崎城を築き、松平氏の新たな拠点としました。岡崎では、岡崎五人衆や代官・小代官による支配体制を整備し、菩提寺である大樹寺の勅願寺化や修築、六所神社の創建など、領国経営にも力を入れました。

世良田氏を名乗る

西三河の実質的な支配権を得るなかで、清康は従来の支配層である三河吉良氏に対する権威性を確立するため、清和源氏の流れを汲む世良田氏を名乗りました。このことが、後に孫の家康が松平から徳川に改姓するきっかけになったとされています。

東三河への進出

清康は、享禄2年（1529年）に尾島城を攻略し、さらに東三河にも進出して今橋城（後の吉田城）を攻め落としました。その後、渥美郡田原の戸田氏を降伏させ、東三河の国人衆を形式的に服属させました。しかし、宇利城の熊谷氏だけは服属を拒んだため、これを包囲し、攻め落としました。

森山崩れと最期

勢いに乗る清康は、尾張国へ再出兵し、岩崎城や品野城を奪いました。しかし、天文4年（1535年）、守山城を攻めた際に家臣の阿部正豊に暗殺され、25歳の若さでその生涯を閉じました。この事件は「森山崩れ」と呼ばれています。

清康の死後、遺骸は岡崎に運ばれる途中で腐敗したため、仮に祭られた墓が西尾市にあります。その後、遺骸は大樹寺に移されました。

森山崩れについては、織田信秀と対立する織田藤左衛門尉を清康が支援したことが原因であるという説や、安城・岡崎両松平家の家臣団の対立が原因であるという説があります。

人物・評価

江戸時代の逸話集『常山紀談』では、清康は「士卒をあはれみ、勇材おはしませしかば、人々其徳になびき従ひ奉れり」と評されています。しかし、譜代重臣や国人衆からの不信により命を落としたともされています。また、親族である桜井松平家の叔父・信定とは諍いが多かったとも伝えられています。

村岡幹生は、清康の生涯を「安城松平家の出でありながら外に出て大草（岡崎）松平家を踏み台として独自の勢力を形成し、安城松平家を束ねていた松平信定に対抗したもののやがて和解して安城家を継いだ」と結論づけています。また、清康の事績は、江戸幕府の公式歴史観により一部が「消された」事実が存在するとも指摘しています。

三葉葵家紋の由来

松平氏の家紋である三つ葉葵は、松平氏が賀茂神社の氏子であったことに由来するとされています。『新編柳営続秘鑑』によると、松平信光の時代に酒井氏に与えられた家紋が、後に松平家の家紋になったとされています。また、『藩翰譜』では、清康が吉田城攻めの際に本多正忠の立葵の家紋を拝領したとされています。

清康の死後

清康の後妻であった華陽院は、清康の死後、三河の諸豪族に嫁ぎますが、いずれも夫に先立たれています。

清康は、若くして亡くなったものの、その後の徳川家の礎を築いた重要な人物として、歴史に名を刻んでいます。

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