対州そば

対州そばとは

対州そばは、長崎県対馬市で栽培されている日本在来のソバの品種、またはその種子を粉にして作られた蕎麦のことです。対馬の特産品として知られています。

歴史

ソバの原産地は中国の雲南省と四川省の間の山間部と言われています。日本への伝来時期は定かではありませんが、縄文時代後期にはすでに利用されていた痕跡が見つかっています。ソバが日本に伝わるルートとしては、朝鮮半島から対馬を経由して各地に広まったという説が有力です。

対馬では、平地が少なく水田稲作には不向きな地形のため、古くからソバが栽培されてきました。離島という地理的な条件から他の品種との交配が少なく、原種に近い特性を保ったまま栽培されてきたと考えられています。昭和30年代頃までは、「木庭作（こばさく）」と呼ばれる焼畑の一種で栽培されていました。

対州そばは、対馬の人々の食生活に欠かせないものとなり、年越しそばはもちろん、冠婚葬祭やお祭り、冬至などの行事食として利用されてきました。現在でも、一部の家庭には蕎麦打ちの道具が残っており、使われています。

江戸時代には、厳原城下には多くの蕎麦屋がありましたが、1794年創業の老舗が昭和の終わりに廃業したことで、対馬から蕎麦専門店が一時姿を消しました。そのため、対州そばは「幻のそば」と呼ばれることもありました。しかし、近年では関係者の努力によって復活し、観光客にも人気を集めています。収量の高い島外の品種との交雑が進んだ時期もありましたが、対州そば振興協議会は、長崎県農林技術開発センターで選抜を行い、原種を採種栽培することで、2006年には対州そば100%への切り替えを実現しました。

2018年4月9日には、地理的表示保護制度に基づき、長崎県で初めて特定農林水産物等に登録されました。2018年の栽培面積は85ヘクタール、年間生産量は40トンとなっています。

特徴

対州そばの特徴は、他の品種に比べて種子が小さい（約1/3程度）ことです。また、風味が非常に強く、香り高いのが特徴で、ナッツのような香りがするとも言われています。

ソバの実には、ルチン（ポリフェノールの一種）が豊富に含まれています。その他にも、タンパク質やビタミンC、ビタミンEなどが含まれており、栄養価が高い食材です。特にルチンには、抗酸化作用や抗炎症作用、血流改善作用があると言われています。ソバの葉や茎には、実よりも多くのルチンが含まれており、ラットを使った実験では、対州そばの葉を摂取することで血清脂質や肝臓脂質のトリグリセリド濃度、肝臓脂質のコレステロール濃度が低下したという報告もあります。

利用

対州そばは、つなぎを使わずに蕎麦粉のみで打つのが特徴です。

特筆すべき郷土料理としては、「いりやきそば」が挙げられます。「いりやき」とは、鶏肉や魚（ブリ、メジナなど）とたっぷりの野菜を使った鍋料理で、人が集まるときに振る舞われる対馬の郷土料理です。この「いりやき」の締めには、素麺または蕎麦に鍋の汁をかけて食べるのが一般的です。

対馬は国境の島ということもあり、韓国からの観光客が多く訪れますが、対州そばは韓国人の嗜好には合わない場合もあり、市場に限りがありました。そこで、蕎麦粉を使用したソフトクリームやアイスクリーム、コーヒー（コーヒー豆と蕎麦粉の混合物）、ガレットなどを開発し、観光客向けに販売しています。

出典

* 対州そば（登録番号第61号）:登録の公示・登録産品紹介 - 農林水産省[地理的表示]保護制度登録産品

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