対砲レーダ装置 JTPS-P16
対砲レーダ装置 JTPS-P16(たいほうレーダそうち ジェイティーピーエスピーじゅうろく)は、
東芝が開発した
3次元レーダーです。
陸上自衛隊の野戦
特科において、敵の砲兵による攻撃を探知し、その位置を特定する対砲兵レーダーとして運用されています。
来歴
本装置は、76式対砲レーダ装置 JMPQ-P7の後継として開発されました。1985年(昭和60年)より技術研究本部で研究が開始され、1994年(平成6年)に部隊での使用が承認されました。長年の研究開発を経て、より高性能な対砲レーダーが実現しました。
設計
システムは、大きく分けて2つの部分から構成されています。一つは、
アンテナやガスタービン
発電機などを7tトラックに搭載した空中線装置です。もう一つは、制御指示部や分析処理部を3 1/2tトラックに搭載した標定処理装置JCM-P11です。これらの装置が連携し、レーダーによる情報収集と分析を行います。
標定方式は、従来のJMPQ-P7と同様に待ち受け方式を採用していますが、大きな違いとして、ビームの形成方法が挙げられます。JMPQ-P7ではペンシルビームを走査して扇状のビーム幕を3枚形成していたのに対し、JTPS-P16では、俯仰方向に幅広いビーム幕を1枚形成します。これにより、飛翔する弾丸がビーム幕を通過する際に、弾道上の多数の点を捉えることができます。これらの点は、モノパルス測角方式によって解析され、弾丸の発射位置や着弾位置を高精度で標定することが可能となります。
また、本装置には、優れたビーム形成・指向能力が求められるため、
アンテナにはアクティブ・フェーズドアレイ(AESA)方式が採用されています。AESA
アンテナは、多数の小型
アンテナ素子を電子的に制御することで、ビームを高速かつ柔軟に制御できます。
この方式により、従来のJMPQ-P7と比較して、より多くの捕捉点を得ることができ、情報量が大幅に増加しました。これにより、従来は困難であった弾種(砲弾の種類)の判定や、
ロケット弾の標定、同一地域での発射と着弾の同時標定にも対応できるようになりました。さらに、標定範囲も遠距離・広範囲化されており、より広い範囲での監視・標定が可能となっています。
さらに、野戦
特科情報処理システムとの連接機能を有しており、得られた情報を迅速かつ正確に共有することができます。これにより、部隊全体の連携強化に貢献しています。
装備部隊・機関
対砲レーダ装置 JTPS-P16は、以下の部隊・機関に配備されています。
特科連隊等の情報中隊および観測中隊のレーダ標定小隊
北部方面隊
第1特科団
第301観測中隊(北千歳駐屯地)
第7師団
第7
特科連隊(東千歳駐屯地)
これらの部隊において、対砲レーダーによる情報収集と分析を行い、部隊の作戦行動を支援しています。
参考文献
防衛省技術研究本部
陸上自衛隊
関連項目
76式対砲レーダ装置 JMPQ-P7
野戦
特科情報処理システム
アクティブ・フェーズドアレイアンテナ
レーダー
これらの情報から、対砲レーダ装置JTPS-P16が、
陸上自衛隊の重要な装備であり、高度な技術が投入されていることがわかります。