寿太郎温州

寿太郎温州（じゅたろううんしゅう）

[静岡県]]沼津市三浦地区で栽培されている、晩生（おくて）の温州みかんです。この地域を代表するみかんとして知られ、その品質の高さから「西浦みかん寿太郎」として[[地理的表示]にも登録されています。

概要

寿太郎温州は、沼津市のみかん栽培面積の約5割を占める主要品種です。2007年以降は、沼津市での出荷量で常に1位を誇っています。市内では、寿太郎温州を使用した特産品の開発や、積極的なマーケティング活動が行われ、地域ブランドとしての地位を確立しています。

生産

ウンシュウミカンは、収穫時期によって極早生から晩生まで分類されますが、寿太郎温州は晩生に属します。一般的な収穫は12月に行われ、その後貯蔵を経て翌年2月から3月にかけて出荷されます。寿太郎温州は、もともと甘みが強い品種ですが、貯蔵することで酸味が抜け、濃厚でまろやかな風味が増します。また、貯蔵は消費者が長くみかんを楽しめるだけでなく、生産者にとっても出荷時期を分散させ、価格の安定化につながるというメリットがあります。

三浦地区の生産者で組織する「富士伊豆農業協同組合西浦柑橘出荷部会」では、青島温州の出荷が終わる2月上旬から3月中旬頃にかけて、寿太郎温州の出荷を行います。さらに、高品質な果実を厳選し、貯蔵・熟成させた「寿太郎プレミアム」、温湿度管理された貯蔵庫で長期貯蔵し、3月下旬から4月上旬に出荷する「寿太郎プレミアムゴールド」といったブランドも展開されています。

特性

果樹の特性

樹の姿は直立気味で、樹勢はやや弱いのが特徴です。実が付き始めると生育が悪化する傾向があります。枝は細く、密に発生し、節間が短いのが特徴です。葉は青島温州と比較して小型で、葉の色もやや淡いです。ウンシュウミカンに高接ぎした場合や、カラタチに接ぎ木した場合、接ぎ木部分に台負けの症状が見られますが、樹の生育に大きな影響はありません。

果実の特性

果実の大きさは100グラムから120グラム程度で、青島温州よりもやや小ぶりです。形は扁平で、表面はなめらかです。果皮の厚さや果肉の割合は、青島温州とほぼ同じです。果皮の着色は青島温州よりも早く、12月上旬には完全に色づきます。糖度と酸度のバランスが良く、糖度は12度から13度、酸度は12月上旬で1%程度です。

栽培特性

寿太郎温州は樹勢が弱く、着花が多すぎると生育不良になりやすい傾向があります。そのため、土壌管理などの樹勢維持が重要となります。発祥地の西浦地区は黒ボク土の肥沃な土地であり、同様の肥沃な土地での栽培が適しています。乾燥しやすい土地では、樹勢が弱まり、結実性が悪化します。葉が小さいため、青島温州よりも日当たりを良くする必要があります。若木のうちに主枝を誘引し、分岐の角度を広げて低樹高の樹形に仕立てることで、樹冠内部への日当たりを確保し、作業性を向上させることができます。根域が小さいため、幼木の間は倒伏を防ぐために支柱で固定する必要があります。高接ぎの場合は、接ぎ木部分が強風で外れやすいため、2年から3年は誘引や結束が欠かせません。

歴史

三浦地区でのみかん栽培の歴史は古く、およそ450年前から確認されていますが、本格的な栽培は明治初期から始まりました。寿太郎温州は、1975年に山田寿太郎氏が栽培中の青島温州の中で発見した、枝の節間が短く、葉色の濃い変異枝（枝変わり）が起源です。山田氏が観察を続けた結果、この枝に実る果実は着色が早く、甘みと酸味のバランスが優れていることが判明しました。1979年にこの枝を石川温州に高接ぎしたものを静岡県柑橘試験場で調査した結果、原木と同じ形質であることが確認され、1984年9月に「寿太郎温州」として品種登録されました。栽培上の課題もあったものの、その高い品質と貯蔵性から、広く普及しました。

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