専制公国

専制公国とは

専制公国（英語: Despotate）は、専制公（Despot）と呼ばれる君主が統治する国家や所領を指します。日本語では、専制公領または専制侯国とも訳されます。

専制公とは、元来は「主人」や「支配者」を意味する言葉であり、ビザンツ帝国においては皇帝の称号の一つとして用いられました。しかし、時代が下るにつれて、皇帝から特別な権限を与えられた地方の有力者や、独立性の高い領主を指す言葉として使われるようになります。これらの専制公が統治する国家や領土が、専制公国と呼ばれるようになりました。

専制公国は、一般的に中央集権的な政治体制を持ち、君主である専制公が強大な権力を掌握しています。しかし、その統治形態は時代や地域によって異なり、ビザンツ帝国の影響下にある地域では、皇帝への формальная な忠誠を保ちつつ、 фактическая な独立性を維持する傾向が見られました。

歴史的な専制公国の例

歴史上、いくつかの専制公国が確認されていますが、ここでは代表的な例として、エピロス専制公国とモレアス専制公国を紹介します。

エピロス専制公国

エピロス専制公国は、第4回十字軍後の1205年に、ビザンツ帝室の一族であったミハイル1世コムネノス・ドゥーカスによって建国されました。エピロス地方（現在のギリシャ北西部およびアルバニア南部）を支配し、ニカイア帝国やラテン帝国と対抗しながら、一定の勢力を維持しました。しかし、14世紀にはオスマン帝国の侵攻を受け、徐々に衰退していきました。

モレアス専制公国

モレアス専制公国は、1349年にビザンツ皇帝ヨハネス6世カンタクゼノスによって、皇子マヌエル・カンタクゼノスを専制公として派遣したことに始まります。モレアス地方（現在のペロポネソス半島）を統治し、ラテン勢力やオスマン帝国の侵攻と戦いながら、ビザンツ文化の中心地として繁栄しました。15世紀には、最後のビザンツ皇帝コンスタンティノス11世パレオロゴスもモレアス専制公を務めましたが、1460年にオスマン帝国によって滅ぼされました。

専制公国の特徴

専制公国は、その成立の経緯や歴史的背景から、以下のような特徴を持つと考えられます。

ビザンツ帝国の影響下にある地域に成立した例が多い
中央集権的な政治体制を持ち、君主である専制公が強大な権力を掌握している
周辺の勢力（ニカイア帝国、ラテン帝国、オスマン帝国など）と対抗しながら、一定の勢力を維持した
ビザンツ文化の中心地として繁栄した地域も存在する

専制公国は、ビザンツ帝国の衰退とオスマン帝国の台頭という歴史的な文脈の中で、独自の発展を遂げた国家形態であると言えるでしょう。

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