導波管 (電磁気)

導波管の概要

導波管（どうはかん、英: waveguide）は、無線通信、特にマイクロ波の伝送に使用される金属製の管のことです。これには主に中空導波管と誘電体導波管があり、それぞれ特有の特性があります。

中空導波管

中空導波管は、円形または方形の断面を持つ金属製の空洞であり、マイクロ波の伝送に特に注目されています。この導波管内では、電磁波が具体的な形状や寸法、波長（周波数）に基づく電磁場を形成しながら進行します。この現象を伝播モードと呼びます。

中空導波管は、同軸ケーブルと比較して中心導体がなく、誘電体損失の原因である誘電体が空気であるため、挿入損失が低くなります。これにより、大電力の伝送が可能です。形状が均一であるため、インピーダンスも安定しやすく、ミスマッチによる損失（VSWRが小さい）も少なくなります。また、伝送路の接点が少ないため、相互変調歪（IMD）も低く抑えられます。

一方で、中空導波管は重量があり、価格が高いため、取り扱いには注意が必要です。最近では、PTFEなどの高性能誘電体を用いた同軸ケーブルが普及しつつあるため、導波管の利用範囲は狭まっていますが、衛星通信やレーダー、大電力の加速器などでは現在でも不可欠な技術です。

方形導波管

最も一般的なのは、断面が方形（通常は長方形）の中空導波管です。ここでの伝送モードにはTEモード（横電界波）とTMモード（横磁界波）があり、最低次のモードはTE10モードです。このモードでは、導波管の断面に対する電界の分布が特定のパターンを形成します。

伝送可能な波長には制限があり、特に最大波長は遮断波長と呼ばれます。これに関連して、金属板や窓を導波管に取り付け、負荷とのインピーダンスを整えることがあります。

分岐導波管

方形導波管には、以下の分岐回路があります。

• - E面T分岐: この分岐導波管は、主導波管の電界と平行な面に配置され、TE10波を逆位相で分岐します。
• - H面T分岐: こちらは、主導波管の磁界と平行な面に設置され、TE10波を同位相で分岐します。
• - マジックT: E面T分岐とH面T分岐を組み合わせた特異な導波管です。

アンテナへの応用

方形導波管は様々なアンテナの設計にも利用されます。

• - ホーンアンテナ: 導波管内で伝送された電磁波が開口端で反射せず、空間中に放射されます。
• - 導波管スロットアンテナ: 導波管の表面に設けられたスロットが、定位された電磁場を生成し、鋭い指向性を実現します。

円形導波管

円形導波管は、最小の伝送損失を持つ形状ですが、モードショフトの問題があるため、曲げる場合には特別な装置が必要です。このため、使用は制限されています。

誘電体導波管

誘電体導波管は、中心部に誘電体を持ち、外周がガラスや空気、プラスチックなどの低い屈折係数の材料で構成されています。光ファイバーやマイクロストリップ、NRDガイドもこのカテゴリに入ります。

まとめ

導波管は、マイクロ波や高周波信号の伝送において、欠かせない技術です。特に中空導波管やその応用において、性能と信頼性が求められる場面で重要な役割を果たしています。

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