小さな運転士 最後の夢

『小さな運転士 最後の夢』は、2005年の24時間テレビで放送されたスペシャルドラマです。このドラマは、拡張型心筋症という難病を抱えながらも「電車の運転手になりたい」という夢を持ち続けた少年、西田朋久（ドラマでの仮名）の物語を基にしています。

物語は、1981年の春、西田和宏・裕美夫妻に裕美の妊娠が告げられるところから始まります。しかし、裕美は以前から拡張型心筋症を患っており、妊娠・出産は命に関わる危険なものでした。それでも裕美は、授かった命を大切にしたいと出産を決意し、夫婦は力を合わせて困難に立ち向かいます。裕美は江ノ電に乗って病院に通い、12月には切迫早産で緊急帝王切開となり、2180gの朋久が誕生します。

退院後、裕美は心不全の発作に苦しみながらも育児に励みますが、朋久もまた、6ヶ月検診で同じ病気を患っていることが判明します。その後、裕美の心不全が悪化し入院、和宏は仕事と育児を両立しながら、江ノ電に乗って病院へ通う日々を送ります。4歳になった朋久は、心不全のため外で遊ぶこともできず、病院へ行く江ノ電が唯一の楽しみでした。しかし、朋久の病状と安全を考慮し、看護設備の整った児童養護施設への入所を勧められます。家族は離れて暮らすことになりますが、休日には和宏と朋久が江ノ電で裕美を見舞うのが、家族が一緒になれる唯一の時間でした。

その後、裕美は亡くなりますが、朋久は不安定な心臓の状態を抱えながらも成長し、中学3年生で入院します。鉄道好きだった朋久は、入院中に鉄道の本を読みふけり、病院内では鉄道博士と呼ばれるほどでした。高校受験にも合格しますが、退院の見込みはなく、医師から余命宣告を受けます。そんな中、朋久が抱いていた夢は、もう一度江ノ電に乗ること、そして運転士になることでした。

父親の和宏は、病院ヘルパーの助言を受け、慈善団体を通じて江ノ電に手紙を送ります。江ノ電は、運転規則を検討した結果、実際の運転は困難と判断しますが、特別に運転席に同乗することを許可します。しかし、計画直前に朋久が体調を崩し、計画は中止。その後、朋久の強い希望と父親の努力によって、再度計画が進められます。

そして、11月11日、朋久は江ノ電が用意した制服を身に着け、江ノ電藤沢駅に現れます。駅員の案内で特別列車の乗務員室に入り、運転士と一緒に発車を告げます。沿線の各駅では、駅員たちが敬礼で見送る中、特別列車は出発しました。その後、朋久は極楽寺検車区に移動し、そこで一番好きだった108号電車「たんころ」を運転するという夢を叶えます。自らの手で電車を動かす感動を味わい、その4日後、朋久は静かに息を引き取りました。

ドラマでは、朋久の家族や周りの人々の深い愛情が描かれており、多くの視聴者の心を打ちました。実話に基づいた感動的なストーリーは、24時間テレビのスペシャルドラマの中で歴代最高の視聴率を記録しましたが、現在までDVD化はされていません。

また、ドラマ放送翌日には、ドキュメンタリー番組「小さな運転士 もうひとつの江ノ電物語」が放送され、生前の朋久さんの映像が紹介されました。このドラマは、難病と闘いながらも夢を追い続けた少年の姿を通して、生きることの尊さや家族の絆を深く考えさせられる作品となっています。

もう一度検索