小丸遺跡

小丸遺跡の概要

小丸遺跡（こまるいせき）は、神奈川県横浜市都筑区大丸に位置し、縄文時代後期を中心とする重要な考古学的遺跡です。この遺跡においては、環状集落の生活の様子が明らかにされており、同時代に存在した掘立柱建物の発見が特筆されます。また、住人の中に特別な地位や役割を持つ人物が存在していた可能性も指摘されています。

遺跡の発見と発掘

小丸遺跡は、鶴見川と早渕川に挟まれた丘陵地帯に立地し、南向きに突き出た舌状台地の上に位置しています。この地区の開発に伴う埋蔵文化財調査が1965年から始まり、1975年から1976年、さらに1982年にかけて発掘調査が行われました。調査の結果、縄文時代後期の生活痕跡が数多く見つかり、居住域と墓域が環状に配置された集落跡が確認されました。

環状集落の構造

小丸遺跡の環状集落は、縄文時代後期の特有のスタイルを示しています。居住域には多くの竪穴建物が見られる初期には対照的に、後期に入ると掘立柱建物という新たな建物様式が登場します。これらの掘立柱建物は、地面を掘り下げることなく、平地に直接柱を立てる構造であり、特に北日本の集落に多く見られますが、横浜市域での発見は新たな地域的特色を示しています。これは、特定の集団が横浜市地域に移住してきた可能性を示唆しています。

特殊な住居「核家屋」

あわせて、縄文時代後期後半の加曽利B式期には、台地の付け根付近で特に大型の建物が建設され、内部には多くのピットが見受けられます。これらの建物は長期間にわたり再建され続けてきたことがわかっており、考古学者の石井寛による「核家屋」という概念が提唱されています。このような建物は、集落内での特殊な祭祀を行う中心的存在であった可能性があり、村の長の居住地だったことが考えられています。

小丸遺跡の意義

小丸遺跡は、縄文時代後期の社会構造や中期からの変遷を包括的に考察するうえで重要な資料を提供しています。特に、環状集落としての独自性や地域間の相関性を示すことで、当時の人々の生活様式や社会的組織について新たな視点を与えています。発掘調査からの結果は、縄文時代の理解を深める上で欠かせない存在であり、今後もさらなる研究が期待されています。

参考文献

• - 横浜市埋蔵文化財センター「小丸遺跡」
• - 石井, 寛「縄文時代後期集落の構成に関する一試論」
• - 谷口, 康浩『環状集落と縄文社会構造』
• - 横浜市歴史博物館『縄文文化円熟』

このように、小丸遺跡は縄文時代社会の研究を深化させる貴重な遺跡であり、今後もさらなる調査が期待されています。

もう一度検索